身寄りがなく、資産も残さずに亡くなった人の火葬や納骨を行うための公費負担が膨らみ続けている。厚生労働省によると、生活保護受給者が亡くなった際の火葬費などを公費で賄う「葬祭扶助」の適用件数は2024年度に5万6447件に達し、過去最多を更新した。国と自治体による公費負担の総額は計約120億円に上るとみられる。
無縁遺体は年間死亡者の3%弱
厚労省の調査によると、引き取り手のない「無縁遺体」は23年度に4.2万人と、年間死亡者数の3%弱に達すると推定されている。無縁遺体は通常、自治体が火葬を行い、遺骨は遺族が引き取りに来る可能性を踏まえ、納骨堂などで一定期間、保管する。引き取り手がなければ、無縁の合葬墓などで葬られる。総務省の調査(21年)では、こうして全国の自治体が保管している無縁遺骨は約6万柱に上った。
民間業者の「無縁ビジネス」
一方、取材では、無縁遺体・遺骨を自治体から格安で引き取る民間業者が存在することが分かった。自治体が負担する公費(約21万円)よりも安い料金16万5千円で、火葬や納骨、永代供養まで一切を請け負うというもので、取材に応じた東京都内の葬儀業者の代表者は、首都圏を中心に1千体以上の遺体を自治体から引き取ったと証言した。
この業者は一般的な葬儀はほとんど手がけず、無縁遺体・遺骨を専門に扱っているといい、遺体を首都圏の住宅街にあるプレハブ倉庫内の冷蔵庫で保管、オフィスに費用をかけないなどコストを削減したビジネスを関東一円で展開していた。
規制の抜け穴
ただ、業者に遺体が引き取られれば、その後の処置が適切に行われているかどうか、国や自治体は把握できず、チェックする仕組みもない。墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)などでは、「死後24時間以内の埋葬・火葬の禁止」「医師の死亡診断書がないと埋葬・火葬できない」という規定はあるものの、遺体や遺骨の保管方法や場所を明確に定める規定がない。
業者の遺体をめぐるトラブルが相次いだことを受け、厚労省は昨年10月、遺体を安置する部屋の感染対策や温度管理などの注意事項をまとめたガイドラインを制定したが、違反しても罰則はない。一方、葬儀業は許認可事業ではなく、公的な資格もいらない。監督官庁もないので、オフィスがなくても誰でも起業できる。業者を公的に把握する仕組みもない。
業界団体の主張と厚労省の対応
業界団体「全日本葬祭業協同組合連合会」(全葬連)は「葬儀業者を届け出制とし、業者には遺体安置や公衆衛生などの講習を受けた管理者を置くべきだ」などと主張する。厚労省は「関係省庁と連携し、法のあり方を今後、検討していきたい」という。



