NHKは5日、職員が番組出演者から性被害に遭う事案があったと発表した。職員は休職し、別の職場での復職を希望したが、人事局などの担当者は異動を認めず、役員らへの報告もしなかった。NHKは重大な人権侵害事案だと認識できず不適切な対応をしたとして、職員に謝罪したという。
被害の経緯と対応
NHKはさらなる人権侵害を防ぐためなどとして、被害に遭った時期や職員や出演者の性別などを明かしていない。5日にあった記者会見では、弁護士など外部の専門家3人による調査検討委員会の報告書などをもとに説明した。
それによると、職員は番組出演者などとの懇親会の後に被害に遭った。その後、体調を崩して休職に至り、被害から1年数か月後に職場に被害を打ち明けた。さらに、同じ部局に復職すると精神状況が悪化するため、別の職場で復職できるよう「特段の配慮」を強く求めた。主治医や産業医もNHKに働きかけたが、人事局などの担当者は同じ職場への復帰が原則だとして、異動を認めなかったという。
報告書の指摘
被害から3年以上たった頃、職員は希望していた職場の一つに異動。その後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。人事局などの担当者らは、性被害事案が起きたことをリスク対策担当の部局に相談しなかった。NHKの会長や役員らは2025年4月、職員が労働組合を通じて「希望がなぜ実現しなかったか確認したい」と申し入れたことをきっかけに状況を把握。NHKは翌5月に調査検討委員会を設置し、今年5月28日に報告書を受け取ったという。
報告書は、人権意識の不足から関係者たちが事案の深刻さを認識できず、組織的な対応もできなかったことなどを問題視。外部の人間から職員が人権侵害を受けた際に相談・通報するルートの整備が不十分だったことや、「組織の問題」として捉えた関係者がおらず、組織間のコミュニケーションが不足していたなどと指摘した。
加害者の発言と再発防止
NHKによると加害者の番組出演者は「飲酒していたため記憶がない。もし、そうした事実があったのであれば申し訳ないことをしてしまった」などと話している。NHKは、被害者への接触を避けるよう対応を求めたという。職員が性被害を職場に打ち明けた後は、加害者への出演依頼はしておらず、出演番組は現在終了しているという。
今回の事案をめぐり、NHKの人事担当役員は人事局の担当者など関係者5人を注意した。調査委からリスク対応にあたる部署を明確にすることや、職員向けの研修の充実などを提言されたことを受け、苦情救済窓口の開設など、再発防止策に取り組むという。
副会長の陳謝
山名啓雄副会長は会見で「業務に関連して職員が性被害を受けたことは痛恨。さらにその後の対応によって、職員にさらなる負担を与え、復職まで時間を要するなど、キャリアに大きな影響を与えたことを重く受け止めている。当該職員に深くおわび申し上げる」と陳謝した。



