岡山県警察学校(岡山市北区)は、新人警察官が県民を守る職務を果たすため、必要な知識や技術を学ぶ「教場」だ。時代の流れか、近年は昔ほど厳しくなくなったといわれるが、実態はどうなのだろう。岡山支局に着任して1か月余りの新人記者2人が6月、体験入学させてもらった。
厳しい警備訓練に挑む
同校は岡山市中心部から北東に車で30分ほどの郊外にある。新採用の警察官は、大卒が6か月、高卒が10か月、寮で暮らしながら法律や逮捕術などを学ぶ。現在約110人の学生が在籍する。
6月24日朝、記者が到着すると、何度も「おはようございます!」と大きな声であいさつされた。普段は遭遇しない状況に若干ひるむ。用意された出動服に着替え、講堂へ。他社の記者8人とともに堤幸司学校長から「体験入校を許可する」という辞令を受け取り、気合が入った。
最初の試練は、部隊活動で犯罪の予防や鎮圧を行う警備訓練。まずは学生が見本を見せてくれた。隊列を組み、教官の号令に合わせてジュラルミン製の大楯(横56センチ、縦110センチ)を上げ下げする。一糸乱れぬ素早い動きに思わず見とれる。
次は記者の番だ。学生に手伝ってもらいヘルメットと手甲を装備。大楯は重さ約6キロ。最初は重く感じなかったが、ものの2、3分上げ下げするだけで、腕がプルプルと震えてきた。「しっかり形を保ったまま!」。容赦ない教官は文字通り鬼に見えた。
続けて楯を抱えたまま、隊列を組んでのランニング。雨の中「1、ソーレ、2、ソーレ」の掛け声で学生らと並んで走る。3周、4周と重ねるうちに、記者たちは次々と脱落。学生は何食わぬ顔で走り終え、世良直輝さん(20)は「県民の安全安心を守れるよう、しんどい訓練でも全力で頑張りたい」と話した。
違反者役に難儀
待ちに待った昼食は、食堂で学生たちといただいた。この日のメニューはカレー。学校長も一緒に食べる。給食の懐かしい味を思い出したが、警備訓練のダメージが思いの外大きく、スプーンを持つ手が重い。食後は学生が当番制で皿洗いを担い、机も丁寧に拭いていた。次の授業まで、学生たちは寮の部屋などで思い思いの時間を過ごす。
校内を散策していると、掲示板に壁新聞を見つけた。学生2人がカエルを持つ写真とともに、中庭の池のメダカを捕食した“犯人”を「緊急逮捕」したという記事が載っていた。ちょっとほっこりした。
午後は一時不停止の取り締まり実習だ。違反者役の教官が「よく見えんかっただけ。今回は許してや」と声を荒らげる。学生は「許すことはできません」と毅然と対応するが、記者は高圧的な態度にドン引き。違反者役をなだめるのに難儀した。
「ホワイト」から遠く
警察官という職業は、厳しい、きついというイメージがある。警察学校は午前6時半起床、朝から夕方まで授業があり、消灯は午後11時。週末は基本的に自由で、かつては禁じられていた携帯電話も外への連絡など必要に応じてOKになったが、それでも一般的な職場から見れば、「ホワイト」な感じからは遠い。
採用試験の応募者は10年前の半分に減ったというが、警務課の海野友香理課長補佐は「やりがいのある仕事。誰かのためになりたいという情熱を持った人は、ぜひ志望してほしい」と呼びかける。
昼食の合間に話を聞いた浅田咲菜さん(20)は小学3年の時、家の近くで空き巣があり、その際に見た女性警察官に憧れたそうだ。「日々の訓練は慣れるまでは大変だった。でも、自分がやらないといけないという意識が芽ばえてきた」と語ってくれた。
「学生の言葉遣いや所作が警察官らしくなってきた」と教官の加藤俊輔さん(41)。記者同士で「日本の未来は明るいなあ」とうなずき合いながら、教場を後にした。
取材後記
激しい運動は高校生以来で、体験入学後3日ほど筋肉痛に苦しんだ。日々の訓練に耐えられるのは、「誰かのために」というまっすぐで、ひたむきな思いがあるからだと感じた。素直に誠実に、仕事に向き合っていこうと強く思った一日だった。(森並)
自分とほぼ同世代の若者が、大きな声でキビキビと動き、礼儀正しく振る舞う姿は、とても新鮮だった。学生とすれ違うたびに感じた誠実さが、警察への信頼を生み出す源となるのだろう。こうした姿勢を見習い、信頼される記者になりたいと思った。(米島)



