モモやサクラの樹木の内部を食い荒らし、枯れさせることもある特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」(通称・クビアカ)の被害が、岡山県のシンボルともいえる岡山後楽園(岡山市北区)で発見されてから1か月が過ぎた。今のところ、他では確認されていないが、徳島ではモモ農家に甚大な被害を与えたことがあり、関係者は警戒を強めている。
後楽園での発見から1か月、迅速な対応が功を奏す
後楽園のサクラの木で初めて、「フラス」と呼ばれるフンと木くずの混合物が見つかったのは7月21日。同園職員の栗坂智人さん(46)が、紅葉の木の点検ついでに隣の「桜林」と呼ばれるエリアも見ると、フラスが木の下に落ちていた。初めて見る形で、上を見上げると、木の幹からフラスが押し出されている場所があった。資料で見た気がして調べると、クビアカのフラスとよく似ていた。「そうでなければいい」と祈りながら県に報告したが、鑑定の結果、クビアカのものと判明した。
フラスが出ていた部分は、樹皮をはぐと幼虫がいた。その場で駆除し、専門家の指導の下、木にネットを巻き付け、残る幼虫が拡散しないようにした。最初に見つかった場所から半径500メートルの範囲で点検し、計4か所のフラスがクビアカのものと判明したが、成虫は見つかっていない。
県内のモモ農家も警戒、徳島では甚大な被害
県内の他の場所での被害は確認されていないが、最も懸念されるのが、県の特産品であるモモへの影響だ。徳島県では被害が一気に広がり、約40農園が廃園に追い込まれている。モモの被害が最初に板野町で確認されたのは2015年。その後、他の3市町にも拡大し、24年にはこれらの市町のモモの木の約3割でフラスが確認された。廃園した農園では、ほぼ全ての木がクビアカが原因で枯れてしまったという。枯れた木は伐採するなどの対策は進めているが、県の担当者は「根絶するのは厳しい状況」と語る。
一度発見されると、甚大な被害が出かねないため、全国の自治体ではあの手この手で駆除している。埼玉県川島町や群馬県高崎市などでは、1匹100円などの奨励金を出し、市民に成虫を捕まえてもらう取り組みをしている。
農家は特徴を学習、県は調査範囲を拡大
全国の状況を踏まえ、岡山県内でも、生息地拡大に備える農家が出てきている。赤磐市で約1ヘクタールのモモ畑を持つ、JA晴れの国岡山・岡山東モモ部会長の生本和浩さん(63)は「5年ほど前からいつ来てもおかしくないと警戒していた」と話す。後楽園での発見後、フラスの標本を農家で集まって観察し、特徴を頭にたたき込むなど、兆候が出れば即座に把握できるようにしている。生本さんは「生産量が大きく減るような被害が出ないうちに、小さく収めたい」と力を込める。
県は現在、調査範囲を半径2キロに広げている。国や県、市が管理する公園や学校のサクラやモモ、ウメなど、クビアカによる被害が出やすい木について点検し、8月末までに県に報告するよう求めている。環境省の担当者は「クビアカは繁殖力が強く、一気に広がるので、早期発見が最も大事。農家だけでは限界があり、一般市民にも協力をお願いしたい」と呼びかける。
クビアカツヤカミキリは中国や朝鮮半島、ベトナムなどが原産国で、体長は2~4センチ。胸部が赤いことから名前がついた。1匹が500~1000個の卵を産み、繁殖力は極めて強い。2012年に初めて愛知県で確認されて以降、8月19日までに22都府県で確認されている。



