東京・三田の慶応義塾大学にある創業89年の学食「山食」が、コロナ禍で廃業の危機に陥ったが、卒業生たちの熱い支援で存続が決まった。クラウドファンディングで集まった金額は4300万円に上る。
「絶対になくさない」という卒業生の思い
山食は1937年の創業とされる。三田キャンパスは高台にあるため「三田山上の食堂」から「山上食堂」になり、「山食(やましょく)」と略されるようになった。元プロ野球選手の高橋由伸さんも学生時代に利用した歴史ある店だ。
コロナ禍で経営が悪化し、現場からは「存続が厳しい」との声が上がっていた。そんな中、卒業生たちが「絶対になくさない」という熱い気持ちで支援に乗り出し、4300万円が集まった。
70年以上腕を振るうベテラン料理人
70年以上コックとして腕をふるってきたのが谷村忠雄さん(86)だ。創業者夫妻の後を継ぎ、1990年から2024年まで社長を務めた。
谷村さんは中学を卒業した1955年、集団就職でコック見習として山食に入り、住み込みで朝から晩まで働いた。仕事がきつくて同期6人はみんなやめたという。谷村さんは「中学のときラジオで早慶戦を聞いていて、慶応のファンだったんです。だから、ここで働けるのはうれしかったですね」と振り返る。
「塾生にとっての第2の家庭」を目指して
「塾生にとっての第2の家庭」を目指してすべて手作りにこだわり、家庭の味を保ってきた。肉は塊から調理し、魚も生で仕入れる。一番人気のカレーも、ルーは手作りだ。今も慶大生の一番人気メニュー「山食カレー」は、あまりの人気にレトルト商品になって発売されている。
一番の思い出は、毎年夏の50日間ほど山梨県の山中湖にある体育会の合宿所で働いたことだ。ラグビー部やサッカー部の部員らと寝食を共にして、朝昼夕の食事を作った。入社した年から49年間続けた。「土日も関係ありませんでした。若いからできたのでしょうね」と笑う。当時の体育会の人たちとは、今も交流があるという。
学生たちには「自分の家と同じだから、何でも好きなことを言っていいよ」と伝えてきた。従業員の給料を払えず借金もあったというが、卒業生たちの支援で山食は新たな一歩を踏み出そうとしている。



