佐賀県武雄市の元消防士が現役消防士向けの民間訓練施設を同市で開設し、消火や救助のスキル向上を後押ししている。訓練費用は自己負担だが申し込みは100人を超え、「受講は1年待ちの状態」だ。背景には、消防本部によっては日々の業務に追われ、新たな訓練手法の検討や情報収集を行う余裕がないとの事情がある。総務省消防庁によると、こうした民間の訓練施設は珍しいという。
より現場に近い訓練
8月下旬、武雄市の木造2階建て民家を改装した民間消防訓練施設「FIRE PARK SAGA」で、防火服を身につけた消防士3人がロープをたぐりながら母屋に入ってきた。煙の中での活動を想定し、視界を遮るマスクを装着。配線に絡まったり、ボンベからの空気が止まったりするトラブルを想定し、無線で声を掛け合いながら課題をクリアしていった。
8月中旬から施設運営を本格的に始めた小田聖志郎さん(36)は、火災時に近い形で一連の対応を経験できる台湾の桃園市消防局の研修を参考にしており、こうした消防士自身を守る訓練もその一つだ。小田さんは「建物の構造が高気密、高断熱に変わり、消防士が屋内に進入して消火や救助にあたることが増え、リスクが高まっている」と警鐘を鳴らす。
参加者の声と人気の背景
訓練に参加した糸島市消防本部(福岡県糸島市)の宮崎大輔さん(34)は「海外の技術などを学びたかった。より現場に近い状況で訓練ができた」と話した。
4月にSNSで参加者を募集し、約120人が申し込みの手続きを完了した。
元消防士の歩み
小田さんは小学3年の時、同級生の家が全焼したことがきっかけで消防士を志した。2009年に地元・武雄市の消防で勤務を開始。やりがいを感じる一方、SNSでレベルの高い海外の技術を見て危機感を覚え、独自に訓練メニューを考案するようになった。



