「安居の渡し」存続危機、女性ユーチューバーが見習い船頭に挑戦
安居の渡し存続危機、女性ユーチューバーが見習い船頭に

世界遺産・熊野古道の一つ、大辺路のルートを渡し船でつなぐ「安居の渡し」(和歌山県白浜町)は、地元住民らが運航してきたが、高齢化などで存続が危ぶまれている。そんな中、船頭の後継者になりたいとトレーニングを積む女性がいる。この地の絶景と住民の温かさに魅せられた、山岳系ユーチューバーだ。

黙々と訓練、手応えをつかむ

紀伊山地の険しい山々を縫うように流れる日置川は、安居の集落付近で「ひ」の字状に大きく蛇行する。その曲がった先端部が渡しの場所。水面が夏の日差しにきらめく7月の朝、菅笠をかぶり、黙々と船の櫓をこぐ麻莉亜さんの姿があった。

川幅は50メートルほど。実際の運航は船頭が2人1組で行うが、今回は先輩船頭と一緒に乗り、指導を受けて何度も往復する。訓練を終え、「最初はどう操作したら右に行くのか左なのか、さっぱりわからなくておたおたしたけど、だんだんとコツがつかめてきたかな」と笑顔で語った。

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存続の危機と新たな挑戦

大辺路の難所とされる「富田坂」と「仏坂」の間に位置する安居の渡しは、古くから旅人や地元住民らに利用されてきた。1950年代に途絶えた後、世界遺産登録の翌年の2005年に地元有志が保存会を結成して復活させ、これまでに1万2000人以上を運んだが、メンバーの高齢化が進む。現在は、中心となっている船頭4人のうち3人が70歳代だ。

各地の山の魅力を伝える動画を配信する麻莉亜さんが大辺路を歩き、初めて渡し船に乗ったのは、昨年11月のこと。「昔の人と同じ体験が今もできる」と関心をかき立てられた一方、運航の厳しい現状を知った。自宅に帰ってからも「もったいない」「何とかしたい」との思いが募り、動画配信での応援も兼ねて、船頭になろうと決意した。

8月に2回目の練習で指導役となった保存会会長の生本洋三さん(76)は、「筋はいいので、回数をこなしていけば大丈夫。お客さんが不安にならないように自信を持って操船できるようになれば」と、この先の成長に期待を寄せる。生本さんによると、操船以外にも、船の修理やメンテナンスが欠かせず、ダムの放流時には重機で船を引き上げる作業など、覚えるべきことはたくさんあるという。

秋のデビューへ、活動拠点も整備

麻莉亜さんは練習を重ね、秋が深まる頃にはデビュー予定という。練習の傍ら、船頭や協力してくれる人たちが使う活動拠点を作るため古民家を借り、掃除やリフォームなどを進めている。将来的には船頭になりたい人を募る。目標は100人で平日の運航も視野に入れる。

「道」と「人」をつなぐ挑戦は始まったばかりだ。

渡し船の1回の乗客定員は4人。運航は土日祝の事前予約制で、利用料は1人1000円(ヒノキの乗船手形付き、保険代込み)。年末年始、お盆、悪天候時は運休。運航には現在、白浜町が補助金を出している。予約は希望日の2日前までに住所、氏名、連絡先、希望日、時間、人数を記入の上、080・2500・3223へショートメールを送る。

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