不登校から一歩、シカの命の授業が変えた少年の笑顔 滋賀の寄宿施設
不登校から一歩、シカの命の授業が変えた少年の笑顔

滋賀県の山あいに位置する不登校児向け寄宿施設「ここから」で、昨夏に入所した真司さん(16、仮名)が、日常生活の変化を通じて笑顔を取り戻している。昨秋、施設のOBが近くの山で野生のシカを捕獲したとの連絡を受け、男性ボランティア指導員と共に現場へ向かった。わなに捕まり暴れるシカを前に、指導員は「このシカを僕たちはいただく。そのためにはあやめないといけない。この先を見るか見ないかは自分で決めよう」と語りかけた。

「全部見る」と決めた真司さん

真司さんはしばらく考えた末、「全部見る」と答えた。自宅に引きこもっていた以前なら決して経験し得なかった「命の授業」だった。真司さんは「家にずっといたら、命と向き合うことなんてなかった」と振り返り、命の尊さだけでなく、食べる側の責任も痛感したという。

日常生活に表れた変化

この経験は真司さんの日常にも波及した。当初、指導員の車で送迎されていた週1、2回の清掃アルバイトは、今では「自転車貸して。一人で行くよ」と自ら申し出て、山の風景を眺めながら往復約7キロの道のりを自力で通うようになった。

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また、持参する弁当づくりにも挑戦。得意料理のだし巻き玉子をメインのおかずに据え、「食材を大切にすることや弁当を作ってくれた人への感謝を、自分が作るからこそ感じるようになった」と語る。

他者との関わりも積極的に

施設内でのコミュニケーションも変化した。今春、体験入所した男子中学生が教室で硬い表情をしているのを見て、真司さんは「これ食べる?」と菓子を差し出した。初めて「ここから」を訪れた日に自分がしてもらったように、優しく声を掛けることができたという。

母親との関係修復

母親との関係も変わり始めた。自宅で過ごす火・水曜日には、入所前はほとんど会話がなかった母親に、施設での出来事を積極的に伝えるようになった。自然と一緒に過ごす時間が増え、将来についても「英検に挑戦しようかな」「大学に行って資格を取りたい」と打ち明けるようになった。

笑顔を取り戻した真司さん

2026年に入って間もないある日の夕食時、入所時を知るスタッフから「顔つきがずいぶん変わったよね」と声を掛けられた。真司さんは「そうかな」と照れながら鏡をのぞき込み、にこやかな笑みを浮かべる自分を見つけた。(文中敬称略)

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