兵庫県明石市の泉房穂市長が7月20日から育児休業を取得し、現職市長としては全国初の事例として注目を集めている。反応は様々で、「応援する」「無責任」といった賛否両論の声が聞こえる。
子育て世代への支援の拡充を訴える声がある一方、4月から新たに受給が始まった「子ども・子育て支援金」を「独身者は負担(やゆ)する」との声も聞かれる。実際には、子どもの有無にかかわらず負担する仕組みではあるが、子育て世代だけが優遇されているように受け止める人もいる。
子育ては人類の始まりから続く営み
子育ては人類の始まりから連綿と続いてきた営みであり、現在は国内の出生数が減少し、統計開始以来最低を更新している状況だけに、社会全体で子育てを支えてもよさそうに思える。
しかし職場では、子どもの急な体調不良で早退や欠勤をし、同僚たちにしわ寄せが生じることへの不満もあるようだ。こども家庭庁のワーキンググループでも「子持ち様」という言葉を使い、業務負担を訴える議論があった。
なぜ子育て世代を巡る議論では分断が生じるのか
働き方における子育て世代を巡る議論では、なぜ分断が生じやすいのか。その背景には、日本の家族構造の変化がある。
厚生労働省が公表した「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、2025年の世帯総数は5505万8000世帯。そのうち18歳未満の児童がいる、いわゆる子育て世帯は917万4000世帯で全世帯の16.7%。およそ6世帯に1世帯の割合である。
今から40年前の1986年は、児童がいる子育て世帯の比率は全体の46.2%だった。半数近い世帯にとって子育ては自分ごとであり、身近な出来事だったといえる。しかし今では子育て世帯が少数派になったため、職場などで特別視されやすい環境が生じているのかもしれない。
子育て世帯の比率が低下している理由は、出生数が少なくなっているだけでなく、世帯自体の構造変化も要因として考えられる。この構造変化の特徴は大きく2つある。一つは核家族化が進んだことだ。
核家族化の進行と孤立する子育て
祖父母などと同居している3世代世帯の比率は、1986年には15.3%だったが、2025年には3.1%と5分の1に減少している。子育て世帯だけに限っても、3世代世帯の比率は1986年の27.0%から2025年には9.5%になった。日常的に祖父母の助力を得ながら子育てできるような環境が、著しく縮小していることが分かる。
祖父母と同居していれば子どもの急な発熱時なども対処しやすいが、そうでなければ夫婦だけでなんとかせざるを得ない。保育園やベビーシッターといった外部サービスの利用や育児休業取得のニーズが高まるだけでなく、職場には状況に応じて柔軟に対応できるような環境整備が求められる。



