大塚製薬栄養素カレッジはこのほど、「猛暑と過度なUVケアが招く“ビタミンD欠乏”対策セミナー」を開催した。セミナーでは、日本人のビタミンD欠乏の現状と、現代の生活習慣がもたらす影響について議論が交わされた。
日本人の約9割がビタミンD不足・欠乏の可能性
第1部では、大阪公立大学大学院生活科学研究科教授の桒原晶子氏が登壇し、「データで見る日本人のビタミンD欠乏のリアル~なぜ現代の食生活だけでは足りないのか~」と題して講演した。
桒原氏は、ビタミンD栄養状態の評価には血清25(OH)D濃度が用いられ、20 ng/mL未満を欠乏、20 ng/mL以上30 ng/mL未満を不足、30 ng/mL以上を充足と捉える考え方を紹介。日本人では不足・欠乏を含めると約90%が十分な状態に達していない現状を示し、世界的にも特にアジアで低下傾向にあると述べた。
現代の生活習慣がビタミンD不足を招く
ビタミンD欠乏の背景として、現代の生活習慣の変化を解説。男性では非屋外職業や低い身体活動量など、日光を浴びる機会を減らすライフスタイルが主な要因とされ、女性では日光回避行動が強い中で、魚などからのビタミンD摂取不足が長期的な濃度低下を招く要因になり得るとした。
ビタミンDは日光で皮膚合成される経路と食事から得る経路があり、血中25(OH)D濃度が最もよい指標とされる。これは過去の摂取・産生の履歴を反映する「残高指標」であり、体内の“残高”を減らしすぎないことが重要だと語った。
猛暑による屋外活動の減少や紫外線回避行動がビタミンD産生に影響する一方、日焼け止めは規定量を塗りきれておらず紫外線が透過しているケースが多く、使用自体が直ちに血中濃度低下につながるわけではないと説明。日陰に留まらず適度に日光を浴びる大切さを強調した。
ライフステージ別の留意点と海外の状況
後半では、妊婦や乳幼児、若年女性など、生活習慣や栄養状態によって注意が必要な層の存在を紹介。ビタミンDは骨代謝だけでなく、皮膚バリア機能の維持や免疫調節にも関わる可能性があり、現代の生活習慣と深く関係していると示した。
第2部では、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩氏との対談形式で、ビタミンDをめぐる社会的背景や日常生活での向き合い方が議論された。欧米で関心が高い背景として、高緯度地域では冬季に皮膚でビタミンDを作りにくく、食品からの補給も限られるため、国レベルで不足を防ぐ仕組みが発達してきたと説明。カナダの乳製品とマーガリンへの添加義務化や、イギリスの高リスク層への配布制度などが例示された。
一方、日本は魚を多く食べる文化で自然に摂取できていたため問題意識が育ちにくかったが、近年は若年層の魚摂取減、室内中心の生活、紫外線回避、猛暑による外出控えが重なって状況が変化。2010年前後から2015年頃にくる病が再び問題視され、学会でも取り上げられるようになったと述べた。
「ビタミンD貯金」のすすめと現実的な対策
健康影響については、骨との関連は確立しているが、筋力や2型糖尿病、妊娠期との関係はまだ十分な科学的根拠が得られていない段階と整理。ビタミンD受容体が全身に分布し、活性型ビタミンDがホルモンとして作用することから、欠乏は全身性の健康課題になり得るとの見解が示された。
「ビタミンD貯金」は、血中濃度が長期の積み重ねを反映する指標であることを伝える表現で、買い物ついでに外に出る、魚を意識して食卓に入れるといった小さな習慣の継続が有効。特に室内で過ごす時間が長い人、魚をあまり食べない人、高齢者が注意すべきとされた。
サプリメント利用時は、腎機能低下やカルシウム製剤・活性型製剤服用の場合、尿中または血清カルシウム濃度のモニタリングが必要と補足。日光を浴びる時間は地域・季節・個人差が大きく一律には示せないが、日焼け止めを塗ったうえで日光を避けすぎないことが現実的だと話した。
食事ではサケ、イワシ、シラス、ウナギなどが挙げられ、きのこのビタミンD₂と魚のD₃は食事摂取基準上同等だが、D₃のほうが有効性を示しやすい報告も紹介。乾燥きくらげを例に、成分表の数値が100gあたりで実際の摂取量と乖離する点や、供給源となる食品が限られる点も不足しやすい要因と指摘された。
最後に、基本は食事による摂取と日常生活で紫外線を避けないことを積み重ねることが大切で、不足が疑われる場合は強化食品やサプリメントで補う判断も現実的だと述べられ、セミナーは締めくくられた。



