子どものむし歯発生率は年々減っていますが、実は大人でむし歯を治療する人は減っていません。「子どもは減っているのに、大人は変わらないなんて、矛盾していませんか?」という声が聞こえそうです。この背景には、多くの人が知らない「銀歯むし歯」の存在があります。
密かに進行する「ステルスむし歯」とは?
昔、「だんご3兄弟」という歌が流行りましたが、むし歯にも3兄弟がいます。「子どもむし歯」「大人むし歯」「銀歯むし歯」です。一口に「むし歯」と言っても、年齢や発生場所によって、タイプが異なるのです。
「子どもむし歯」とは、一般の人が最初に思い浮かべるむし歯です。歯の頭の部分(歯冠)がむし歯菌に侵され、穴が開きます。歯磨き習慣やフッ化物の普及により、このタイプのむし歯は着実に減少しています。子どものむし歯発生率が下がっているのは、この成果です。
次に「大人むし歯」は、歯の根の部分(歯根)にできるむし歯です。年齢や不適切な歯磨き、歯周病などによって歯ぐきが下がり(退縮)、露出した歯根がむし歯になりやすくなります。
「80歳になっても20本の歯を残そう!」をスローガンに掲げる「8020運動」の成果で、今や半数以上の方がこれを達成しています。その反面、80歳まで歯が残っている分だけ、むし歯リスクが上がってしまいます。歯根の歯質は弱いため、むし歯の発症や進行が早いのも特徴です。
銀歯の陰に隠れる再発むし歯
そして、本題の「銀歯むし歯」とは、過去のむし歯治療で詰めた銀歯の「陰」に隠れて再発するむし歯です。歯科医師の中には、むし歯治療の中で再発治療が約8割と語る先生もいるほどです。
「定期検診に通っているから大丈夫」と思われがちですが、実はこの銀歯むし歯、歯科医師による目視でも発見しにくいという厄介な特徴をもっています。
「むし歯は黒くなるから、分かるのでは?」と考える方もいるでしょう。しかし、銀歯の金属成分が歯に移り、まるで歯がタトゥーを入れたように変色することがあり、目で見ても診断は容易ではありません。
さらにレントゲン検査でも難しいです。むし歯を見つける原理は、「硬いものが白く、軟らかいものが黒く」映ることにあります。つまり、むし歯になっている部分の歯が溶けて柔らかくなるので、レントゲンでは黒く写り、そこが診断の手がかりになります。ところが、銀歯は硬く、レントゲンを通しにくいため、歯よりもさらに白く写ります。その白さの陰に、再発したむし歯がすっぽりと隠れてしまうのです。
まさに、銀歯むし歯は、正体を隠して忍び寄る「ステルスむし歯」なのです。



