転倒・骨折が要介護の入り口に
高齢者が要介護状態や寝たきりになる原因として、認知症や脳卒中、加齢による身体機能の衰えを思い浮かべる人は多い。しかし、リハビリテーション科医の安保雅博氏は「転倒・骨折」が大きな原因として見落とされがちだと警鐘を鳴らす。転倒によるケガをきっかけに活動量が減り、筋力が衰え、外出しなくなり、最終的に要介護状態へ至る負の連鎖が生じるという。
厚生労働省の『令和4年版 厚生労働白書』によると、65歳以上の要介護認定率は18.3%だが、75歳以上では31.5%、85歳以上では57.8%と急上昇する。安保氏は「75歳になった瞬間に急に衰えるわけではない。65~75歳の10年間に体を動かす基盤をつくれたかが、その後の老いを左右する」と強調する。ただし、75歳以上でも「気づいた瞬間がスタートライン」であり、適切な対策で衰えを食い止められるという。
日常の何気ない場面で転倒は起こる
転倒の原因は、交通事故や高所からの転落といった大きな事故だけではない。家の中でのつまずき、ちょっとした段差でのバランス崩し、何もないところでのよろめきなど、日常の何気ない場面で発生する。高齢者の場合、若者なら打撲で済む転倒でも、手首や腕の骨折、さらには股関節の骨折につながる危険性がある。股関節の骨折は歩行能力や生活の質を大きく損ない、入院や手術を機に体力が低下。転倒への恐怖から外出を避けるようになり、活動量減少→筋力低下→転びやすくなるという悪循環に陥るケースが多い。
安保氏は、転倒を防ぐために「転びにくい靴」を選ぶことの重要性を指摘する。特に雨の日にはマンホールや鉄格子のふたが滑りやすく、店内の入り口マットや床のビニール、エスカレーターも危険なスポットだという。
靴選びの2つのポイント
安保氏は靴選びの注意点として、まず「かかとが固定されていること」を挙げる。かかとが固定されていないサンダル、特に「かかと無しサンダル」は絶対に避けるべきだという。かかとが固定されていないと歩行中に靴の中で足が滑り、バランスを崩しやすくなるからだ。
次に「つま先に1cm~1.5cmの余裕があること」が重要だ。つま先に余裕がないと、歩行時に足指が圧迫され、正しい歩行ができず転倒リスクが高まる。安保氏は「筋トレやウォーキングも大事だが、まずは足元から見直すことが転倒予防の第一歩」と述べている。
転倒予防が健康寿命を延ばす
安保氏は著書『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)の中で、歩幅が寿命の指標になると述べている。歩幅が広いほど転倒リスクが低く、健康寿命が延びる可能性があるという。同書では、正しい靴選びに加え、歩幅を広げるためのエクササイズや日常生活での注意点も紹介されている。
高齢者の転倒防止は、単にケガを防ぐだけでなく、要介護状態への移行を防ぎ、自立した生活を長く続けるために極めて重要だ。安保氏のアドバイスを参考に、靴選びから見直してみてはいかがだろうか。



