高額でも難病治療を支える 国民皆保険に問われる「メリハリ」 小塩隆士・一橋大特任教授
高額でも難病治療を支える 国民皆保険に問われる「メリハリ」

人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の治療製品が患者へ届く時代は、国民皆保険に新たな問いを突き付ける。パーキンソン病治療製品「アムシェプリ」の薬価は約5500万円。虚血性心筋症治療製品「リハート」は約5320万円だ。今後、同様の高額な再生医療や遺伝子治療が相次げば、限られた保険財源でどこまで支えられるのか。

「金額が高いからだめとはいえない」

中央社会保険医療協議会(中医協)の会長を務めた公共経済学者、小塩隆士・一橋大特任教授(公共経済学)は、「金額が高いからだめとはいえない」とする一方、軽い医療と、重い難病を救う治療との間で保険給付に「メリハリ」が必要だと説く。患者の希望と制度の持続性をどう両立させるのか。条件・期限付き承認の意味、費用対効果、社会が負担すべき範囲を聞いた。

条件付きは「仮免許」

iPS細胞由来2製品の承認について、小塩特任教授は「科学の成果としては大きな節目ですが、医療経済や保険医療の立場から見ると、高額な治療が登場すること自体は初めてではありません」と述べる。「がんや希少疾患では、数千万円から億円単位の医薬品が既に出ています。今回のiPS細胞製品も、その流れの中に位置付ける必要があります」と指摘する。

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条件・期限付き承認は「社会実装の入り口」だとし、「iPS細胞という名前で注目されますが、本当に問われるのは、限られたデータで承認した治療を、医療制度の中でどう検証し、支えていくかです」と語る。

仮免許のまま走り続けてはならない

条件・期限付き承認の理解について、小塩特任教授は「症例が少なく、通常の治験で効果を十分に確認しにくい治療を、いわば『仮免許』で走らせる仕組みです」と説明する。「困っている患者さんがいる以上、一定の安全性と効果の可能性を確認した段階で届け、実際の診療でデータを集める考え方は悪くないと思います」と評価する。

その上で、「仮免許のまま走り続けてよいわけではありません。効果が確認できなければやめる判断も必要です」と強調。「患者さんに早く届けることと、科学的な検証を続けることが一体になって初めて、制度への信頼が保たれます」と結んだ。

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