健康寿命を延ばすための新たな取り組みとして、複数の自治体が連携し、健康状態を測る新しい指標の開発を始めることが、関係者への取材でわかった。従来の平均寿命に加え、日常生活の質や社会参加の度合いを評価する基準を設け、健康施策の効果を客観的に示すことを目指す。
新指標開発の背景
厚生労働省のデータによると、日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳(2023年)だが、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は男性72.68歳、女性75.38歳(2022年)と、平均寿命との間に約10年の開きがある。この差を縮めるため、各自治体が健康増進策を進めているが、効果の評価方法が統一されていないことが課題となっている。
今回の連携には、東京都内の複数の区や、大阪府、福岡県などの自治体が参加を予定。各自治体が持つ健康診断や介護保険のデータを共有し、共通の評価軸を策定する。新指標では、歩行速度や認知機能、社会的なつながりなどを数値化し、地域ごとの健康状態を比較可能にする。
具体的な取り組み
連携の中心となるのは、東京都健康長寿医療センターの研究チームだ。同センターの田中宏明教授は「健康寿命の延伸には、個人の生活習慣の改善だけでなく、地域の環境整備も重要。新指標により、どの施策が効果的かを科学的に評価できるようになる」と話す。
具体的には、2025年度からモデル地域を設定し、住民の健康データを収集。歩数計やスマートフォンのアプリを活用し、日常の活動量を測定する。また、地域のイベント参加率やボランティア活動の頻度も指標に加える。収集したデータは匿名化された上で分析され、各自治体の健康施策の改善に役立てられる。
期待される効果
新指標の導入により、健康寿命の延伸に向けた施策の効果が可視化されることで、自治体間の競争が促進されると期待される。例えば、歩行速度の向上に効果があった公園の整備や、認知症予防につながる地域サロンの運営など、成功事例の横展開が進む可能性がある。
一方で、個人のプライバシー保護やデータの標準化といった課題も指摘されている。参加自治体は、個人情報保護委員会のガイドラインに沿ってデータを管理し、外部への提供には本人の同意を得る方針だ。
この取り組みは、2026年度以降に全国の自治体への展開が検討されている。政府の「健康寿命延伸プラン」にも位置づけられる見通しで、国民の健康的な生活を支える基盤となることが期待される。



