京都大の山中伸弥教授がiPS細胞を作製した際に見いだした遺伝子「山中因子」を使い、細胞を「若返らせる」研究が米国で本格化している。米ライフバイオサイエンシズが、臨床試験(治験)で緑内障などの患者に使った。老化のメカニズムに対し、科学的に介入する試みが熱を帯びつつある。
緑内障患者への治験開始
この治験は「ER―100」と呼ばれる候補薬を使う。ライフバイオサイエンシズが6月、患者に初めて投与したと発表した。米国の病院で最大18人に試してもらう。
山中因子は、皮膚などの体細胞を受精卵に近い状態へ戻す「リプログラミング(初期化)」を促す四つの遺伝子のことだ。山中因子を目の内部で働かせ、緑内障で傷ついた神経細胞や視神経の機能回復をねらう。
他社も追随、投資拡大
ライフバイオサイエンシズの共同創設者であるハーバード大学のデイビッド・シンクレア教授は2020年、マウスを使った実験で視力が回復したとする論文を英科学誌ネイチャーで発表している。
他の企業も、山中因子を使って細胞を若返らせようとする研究に乗り出している。米アルトス・ラボは、臓器移植の際に取り出した腎臓に山中因子を使うことで、成功率を高めることをめざす。同社はアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏らが出資し、設立時に30億ドル(約4800億円)を集めた。
長寿科学市場の拡大
先進国で高齢化が社会課題となるなか、老化研究への期待が高まっている。長寿科学の市場を調べている英ロンジェビティ・テクノロジーによると、世界の民間投資額は増加傾向が続いており、24年は85億ドル(約1兆3600億円)と14年の約2倍になった。



