『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』(光文社)を出した実践女子大学教授の守田和弘氏は、「健康に問題をもたらすのは食事制限そのものではなく、その『極端さ』にある」と指摘する。
糖質を減らすと、体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーを補おうとするため、短期間で体重が減ることは多い。だが糖質は単なる「太るもと」ではなく、脳の主要なエネルギー源であり、集中力や判断力を支える大切な燃料でもある。ご飯を抜くとぼんやりしたり、イライラしたりするのはそのためだ。
糖質制限の「極端さ」がもたらすリスク
糖質の少ない食事が長く続くと、筋肉の分解が進みやすくなり、代謝の低下を招く。体重は減っても、その中身が「筋肉の減少」であれば、本当の意味での健康とはいえない。
さらに見落とされがちなのは、糖質を制限すると、糖質を含む食品に豊富な食物繊維やビタミンB群まで不足してしまう点だ。米やパンを減らすだけでなく果物や芋類まで避けるようになると、便秘や疲労感、肌荒れが起きやすくなる。糖質制限中に「なんとなく元気が出ない」「笑顔が減った」と感じるのは、体と心の両面でエネルギーが不足しているからだ。
もちろん糖質のとりすぎがよくないのも事実で、清涼飲料やスイーツを無制限に摂れば、血糖値が急上昇し、肥満や糖尿病のリスクが高まる。問題は「制限」そのものではなく「極端さ」にある。炭水化物の摂取量と死亡率の関係を調べた大規模研究では、極端に少ない摂取も極端に多い摂取も死亡率が高いことが示されている。
最近では糖質を「毒」とまで表現する書籍も登場し、「食べてはいけないもの」という誤解が広まっている。糖質をゼロに近づけることが目的化してしまうと、健康を守るどころか壊しかねない。
長く健康を保つ「調整の連続」
食事は本来、我慢ではなく「調整の連続」だ。たとえば昼にラーメンを食べたら、夜はご飯を控えめにして野菜を多めにする。週末に甘いものを楽しんだら、翌日は軽めにする。そんな柔軟なリズムが、長く健康を保つコツである。
糖質も敵にするのではなく、「味方として上手に付き合う」ことが大切だと守田氏は説いている。



