献体登録者数が20年で2割減、千葉大准教授が危機感
献体登録者数が20年で2割減、千葉大准教授が危機感

医学教育や医師の手術技術向上を支える「献体」の登録者数が減少傾向にある。千葉大大学院医学研究院の鈴木崇根准教授(54)(解剖学)によると、同大医学部の献体登録者数は約20年前から約2割減り、「10年後には献体が不足する可能性がある」と危機感を募らせる。県民向け講演会などを通じ、献体登録への理解促進に力を入れている。

現代医療を支える基盤

献体は、生前の本人の意思に基づき、死後に遺体を医学・歯学の教育や研究のために一定期間提供する制度。医学生の解剖実習だけでなく、現役医師の手術トレーニングや新しい手術法の研究、医療機器の開発など、現代医療を支える基盤となっている。

鈴木准教授によると、献体登録者は1983年の「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律(献体法)」制定を機に認知度が上がり、大きく増加した。千葉大の献体の新規登録者数は80年代後半まで年約200~250人で推移。在籍登録者数は2004年度の2382人がピークとなった。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

だが、それ以降は新規登録者が100人を割る年も多く、特に新型コロナウイルス禍では高齢者の地域活動が停滞して献体制度に関する情報の周知が弱まった影響もあり、21年度は57人まで減った。25年度の在籍登録者数は1883人とピーク時から約2割減少した。

理解促進への取り組み

こうした状況を受け、千葉大は3年前から県民向けイベント「献体の集い」を年1回開催している。献体制度の仕組みや意義を説明し、参加者の疑問や不安に丁寧に応えている。地道な周知活動で、新規登録者が増加傾向に転じたものの、「将来の需要を考えると依然として十分とは言えない」(鈴木准教授)状況という。

高度な医療技術に不可欠

1990年代以降、内視鏡手術やロボット支援手術など、体への負担をできるだけ少なくした「低侵襲手術」が急速に普及した。医師にはより高度な解剖学の知識と精密な手術技術が求められるようになった。模型やコンピューターシミュレーターでは学べない人体組織の質感や立体構造を習得する必要があり、献体を用いた実践的な研修が欠かせない。

また、千葉大では2010年、医学生や若手医師だけでなく、各診療科の専門医師を対象に実践的な解剖教育や手術研修を行う「クリニカルアナトミーラボ」を整備。他大学の医師らも含め、毎年約700人が研修を受けており、献体の需要が高まっている。

医学教育においても、献体は医師としての倫理観を育む重要な存在だ。学生は献体された遺体に向き合い、知識や技術だけでなく、命への敬意や責任感を学ぶ。こうした経験が、良医への第一歩になるとされている。献体は単なる教材ではなく、未来の医療を支える「命のリレー」だという。

登録の課題と理解呼びかけ

千葉大医学部に自分の遺体を無償で一時提供するボランティア団体「千葉白菊会」がある。1965年に設立され、これまでに3000人以上が献体という形で医学教育や医師の技術向上を支えてきた。だが、登録には原則として県内在住の60歳以上であることや家族全員の同意が必要で、登録者の確保は容易ではない。

また、登録者が認知症となり、献体提供の意思が伝わらずに火葬されてしまったり、孤独死して時間が経過したりして、献体につながらないケースもある。

鈴木准教授は「献体は、亡くなった後も次世代の医療に貢献できる尊いボランティア。献体者からは『自らの身体を広く医学・医療の発展に役立ててほしい』という強い気持ちをいただいている」と強調。「献体が未来の患者を救うことになるので、一人でも多くの方に献体の意義を知ってもらいたい」と理解と協力を呼びかけている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

今年の「献体の集い」は10月末に開催予定。詳細が決まり次第、千葉白菊会のホームページで公表する。