突然、胸がバクバクと激しく打つのを感じたことはないだろうか。ストレスや更年期症状かと思いきや、実は心臓の危険信号かもしれない。52歳の女性ライターが、不整脈専門クリニック「井上不整脈クリニック」(仮名)を訪れ、一連のスピード診断を受けた体験を詳しく報告する。
血液検査で心不全のマーカー「NT-proBNP」をチェック
最初に行われたのは血液検査。井上院長は「まず血液検査で注目したいのが、『NT-proBNP』という項目です。これは心不全の可能性を見るマーカーで、心臓に負担がかかると跳ね上がる数値です」と説明した。筆者の数値は基準値内で、ひとまずクリア。ただし、この数値が基準値を超えていても必ずしも心疾患があるとは限らず、「高血圧や骨折などの怪我をした場合でも、心臓への負荷がかかり、数値が上がることがある」と井上院長は補足した。あくまで総合判断のための重要な指標の一つであり、胸の不調を感じる人はこのマーカーを測ってもらうのも有効な手段だ。
胸部レントゲンで心臓の大きさと動脈硬化を確認
次に胸部レントゲン撮影。「心臓を診るのになぜレントゲン?」と思ったが、画像から心臓の危険サインを読み解くことができる。特に注目すべきは心臓の大きさだ。筆者の実際の画像を用いて説明する。胸郭の最大幅(青線)に対する心臓の最大幅(赤線)の比率が50%未満なら正常で、50%を超えると心拡大や心不全の可能性が疑われる。筆者の場合は44.9%でセーフ。井上院長は「画像を見る限り、心臓が引き締まっていてむしろ良い状態です」と述べ、筆者はホッとした。さらに、肺の下部に白いモヤがかかった影があれば心不全による胸水の可能性、胸の中央部の大動脈が曲がりくねっていれば動脈硬化の進行サインとなる。健康診断で何気なく撮っていた胸部レントゲンが、実は心臓の危機を知らせる重要な検査だと知り、見方が変わった。
心エコーでポンプ機能「駆出率」を測定
心臓の弁の動きや血流の状態を見る心エコーでは、井上院長は特に心臓のポンプ機能を示す「駆出率(くしゅつりつ)」に着目した。「駆出率は、左心室が1回の拍動で血液をどれくらいの割合で全身に送り出しているかを示す指標です。50%以上あれば正常と言えます」との説明。筆者は60%近くあり、問題なし。心エコーは胸に超音波を発する機器を当て、心臓や血流の動きを調べる検査で、所要時間は約15分。今後心エコーを受ける際は、「駆出率50%以上」という数値に注目するとよい。
24時間ホルター心電図で日常の心拍を記録
最後の検査は、一昼夜かけて心拍をモニタリングする「24時間ホルター心電図」。正直、胸に機械をつけて一日過ごすのは煩わしいと思っていたが、実際に装着してみると想像以上にコンパクトで軽かった。注意点は「入浴を控える」ことと、「電子機器に近づきすぎない(電子レンジのスイッチを入れたら離れる、スマホを心電計に近づけないなど)」ことだけで、普段通りの生活をして構わない。結果は翌日には判明し、筆者の不整脈は特に問題ないと診断された。
突然の胸のバクバクに不安を感じたら、まずは専門クリニックでこれらの検査を受けてみることをおすすめする。早期発見・早期治療が命を守る。



