医療法人「和幸会」(大阪府四條畷市)が運営する放課後等デイサービス「KIDSクラブたわら」では、発達に特性がある6~18歳の約50人が通い、ホースセラピーを実施している。
プログラムの実際
午後3時、近くの緑地の円形馬場に小学生4人が集まり、安全ルールを確認。ポニーのメイ(7歳)に順にまたがり、馬上で体を伸ばして尾やたてがみに触れる体操、輪投げや玉入れなどのゲームを行う。騎乗は1人10分程度で、3人のスタッフが伴走し、利用者の表情や馬の様子に目を配る。
4年生の女児は以前、周囲との距離がうまく取れなかったが、メイとの出会いで挑戦心が芽生え、学校で馬を調べて発表した。5年生の男児も「将来、ここで働きたい」と話す。施設管理者の沖田陽子さん(56)は、「言葉を介さない馬とのコミュニケーションで、どうすれば伝わるか、相手との距離感や加減を考える力が自然に育まれる」と語る。
セラピー馬の条件と訓練
草食動物の馬は急な物音に敏感だが、驚いても走らず人に寄り添える馬がセラピー馬の条件。施設の動物担当・垣又彩花さん(25)が、メイが2歳の頃から専門家の助けで訓練を積んできた。今年は、より大柄な木曽馬「栃の嵐」(23歳)が加わり、系列の高齢者施設や精神障害者施設でも活躍が期待される。
歴史と課題
人と馬の関わりは古く、古代ローマ時代には負傷兵のリハビリに乗馬が用いられた。現代のホースセラピーは欧米で1960年頃、日本では80年頃から本格化。ストレス軽減や不登校・引きこもりの社会参加、障害児の療育に効果が報告されている。
元JRA調教師の角居勝彦さん(62)は、天理大学と協力して普及に取り組み、「障害者や小さな子が近寄ると馬の動きが変わる。弱者に対し、自分の行動をどうあるべきか考えられる不思議な能力が馬にはある」と話す。一方で「馬なら何でもできると過信すると事故につながる」と警告する。
課題として、国内ではホースセラピーの定義が団体ごとに異なり、資格も統一されていない。天理大学の種村理太郎准教授(社会福祉学)は、「活動であれ療法であれ、誰が誰に対しどのような形で実践するかを明確にすることが、利用者のためにも人材育成のためにも大切だ」と指摘する。
持続可能性
ホースセラピーには複数の知識豊富なスタッフが必要で、馬の飼養費もかかる。事業者は自治体の助成金や補助金、社会貢献の枠組みで利用者の負担を抑えている。馬の寿命は約30年。一頭の馬の満たされた生涯が人々の幸福と直結する持続可能な仕組みの実現が、人と馬の新たな章を開くと期待される。



