日本再成長の鍵は小中学校の教育変革:エコノミストが提言
日本再成長の鍵は小中学校の教育変革

日本が再成長するために必要な真の戦略とは何か。慶応義塾大学大学院教授の小幡績氏は、その答えは小中学校の教育にあると指摘する。一般的な「日本の教育は詰め込み教育で弊害がある」という批判に対し、小幡氏は「私にはピンとこない。九九以外に記憶がない」と述べ、自身の経験を基に異論を唱える。

先行研究の禁止と感性の重視

研究者としても、小幡氏はゼミで先行研究の調査を禁止している。「せっかくの感性が先行研究に汚されて、凡庸な研究しかできなくなる」からだ。ハーバード大学のグレゴリー・マンキュー教授も、先行研究を見るのは最後だと語っていたという。小幡氏は「新しいことを自分で見つける瞬間だけが快感で、その後の99.99%は苦しく退屈な検証とレフェリーとの戦いが待っている。その唯一の楽しみを先行研究に汚されたくない」と説明する。

小学生時代を振り返り、国語の教科書に載っていた芥川龍之介の「トロッコ」はつまらなかったが、図書館で見つけた「鼻」や「蜜柑」は面白く、小学生向けの芥川全集を読み漁ったという。「自分で感じ、見つける。その場を整える。それだけが教師や学校の務めだ」と強調する。

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初等教育の変革が日本を強くする

小幡氏は、自身の小学校1年生の時の体験を紹介する。担任の先生は、心理学研究室にある円形の舞台でロールプレーイングを行い、ビデオを後でクラス全員で見て感じ、考え、議論する授業を実施していた。「教科書はまったく消化されていなかったが、それが許された素晴らしい学校だった。トモエ学園(黒柳徹子の『窓際のトットちゃん』に出てくる学校)ならずとも、どこの学校でも制約条件を外せばできるはずだ」と語る。

そのような授業により、「空気を読む」と称して誰の気持ちもわからないままびくびくし、自分の存在を消すことだけを学ぶことから解放され、正面から他人の気持ちを想像できるようになると主張。「実際にはわかり合えないから、想像しようとするということが重要だ」と述べる。

想像力を鍛える方法とSNSの弊害

「感じる」ことから「観察」に移るために必要なのは想像力であり、それを鍛えるにはアニメよりもマンガの方が効果的で、さらに読書が最も効果が高いと指摘。一方、SNSの動画は想像力と相手の立場に立つことを失わせる点で最も害悪だと断じる。

小幡氏は、文部科学省が情報モラルやメディアリテラシーなどの情報教育の授業時間数を大幅に拡充する案を中央教育審議会の特別部会で示したことに触れ、「詰め込み批判をして、もっと質の悪い詰め込みをする(しかも間違ったことを教え込む)日本の大人たちはどうなっているのか」と批判。知識として教えるのではなく、感性と想像力、相手の立場に立つことを育む教育こそ必要だと訴える。

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