与野党合意の給付付き税額控除は愚策、中間層の分断を招く
給付付き税額控除は愚策、中間層分断を招く

与野党が合意した「給付付き税額控除」の中間とりまとめ案に対して、批判が相次いでいる。評論家で著述家の真鍋厚氏は、この制度が高齢者への選別的現金給付に過ぎず、中間層の不満を増幅させ、社会の分断を決定的にする愚策だと断じる。

「働き損」と「嫉妬」が社会を蝕む

真鍋氏は、現場レベルで「働き損という被害者意識」や「隣人への嫉妬」が強烈に刺激されるリスクを指摘する。資産や世帯全体の購買力を完全に捕捉せずに個人単位で給付を行えば、「本当に困窮している層」と「世帯としては裕福だが個人としては低所得の層」が混在することは明らかだ。これにより、中間層の「相対的剥奪感」による不満が、政府だけでなく給付対象者である弱者へと向けられるという。

この構造は、年金制度や生活保護が抱える矛盾と同様、互いを監視し引きずり下ろし合う「相互排除」の世界を招来する。さらに、近年勢いを増す生存主義(サバイバリズム)の潮流に拍車をかけると真鍋氏は警告する。

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「サバイバー」と「取り残された層」への二極化

経済学者アルバート・O・ハーシュマンは、組織や国家のサービスが低下した際、メンバーは「告発・抗議」か「退出・離脱」のいずれかを選択すると論じた。真鍋氏は、現在の日本では「静かな退出・離脱」が加速すると予測する。中間層は、物価高や不公平な給付付き税額控除を見て、「政治に期待しても変わらない」と諦め、NISAや副業といった私的領域にリソースを集中させるという。

これは国家プラットフォームに対する不信任投票に他ならない。ここで問題となるのは、NISAを活用できる余剰資金や副業スキルを持つ「強者中間層」と、日々の物価高で投資余力がなく副業も難しい「弱者中間層」への二極化だ。強者は自己防衛に成功する一方、弱者は沈んでいく可能性が高い。

自己防衛に成功した強者は、「なぜ努力も投資もしなかった人間を自分の税金で救わなければならないのか」と考えるようになる。本来、同じ現役・中間層として連帯し政府の増税や社会保障の不備に異議を唱えるべき人々が、分裂し反目し合うのだ。

真鍋氏は、財政制約を優先して人間の心理傾向を軽視したこの新制度が、日本に新たな火種を作り出し、自己責任論を正当化する理由になると結論づけている。

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