戦後81回目の終戦の日を迎えた。東京・日本武道館では全国戦没者追悼式が行われ、平和への決意を新たにする日となった。国策を誤って無謀な戦争を始めたことで多くの命が失われた反省を風化させてはならない。
式典はいつもと変わらないが、国際情勢は大きく変化している。長く秩序の守り手だった米国までもが「力による支配」に走り、中国やロシアを含む大国が国際法を軽視する状況は危険極まりない。現状を傍観していれば、弱肉強食の帝国主義時代に逆戻りしかねない。
軽視される法の支配
米国のトランプ政権は、イランの核兵器開発阻止を掲げ、イスラエルとともにイランへの一方的な攻撃に踏み切った。戦闘は今も続き、出口が見えない。米国とイランの双方がエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の安全を脅かしていることも、世界経済を混乱させている。
ロシアによるウクライナ侵略は4年半に及ぶ。犠牲となった民間人は数え切れない。中国は軍事的な海洋進出を強め、武力による台湾統一を辞さない姿勢も崩していない。自国の意に沿わない国には重要鉱物の輸出を規制するなど、経済を武器化して威圧を続けている。
「法の支配」が一定程度維持され、大国といえども国際法に従わなければならないという戦後の秩序は、もはや崩壊しつつある。世界は大国の「横暴」によって新たな危機の時代に入った。
国連の立て直しと高市外交
20世紀の2度の世界大戦の教訓を踏まえ、先の大戦で戦勝国となった米国などが主導して設立したのが国連だ。国連憲章は主権と領土の尊重、紛争の平和的解決を明示している。だが、世界の平和に責任を持つべき国連安全保障理事会常任理事国、それも米露の2大国が憲章を公然と破ったことで、国連は機能不全に陥った。
とはいえ、当面、大国を動かすことのできる枠組みは国連だけだ。法の支配や自由貿易の恩恵を受けてきた日本が主導し、国連を立て直す必要がある。法的拘束力はないとはいえ、国連総会の決議は重い。平和と安定を求める加盟国を日本が結集し、大国が身勝手な振る舞いを思いとどまるよう、国際世論を喚起していくことが重要だ。
そうした観点からすれば、高市内閣のこれまでの外交努力が十分とは言い切れない。高市首相が昨年10月の就任後、米国と韓国との首脳会談を積極的にこなし、日米同盟の強化や日韓関係の改善に取り組んでいることは評価できる。「自由で開かれたインド太平洋」の構想を練り直し、エネルギー安全保障などの分野でも関係国と協力を深めようとしている。
一方で、首相は国会日程の変更によって国際会議に出席する機会を逸したこともある。多国間の協調を回復するために力を注いでもらいたい。
北方領土問題と防衛力強化
戦後81年たっても、なお未解決の問題は少なくない。ロシアのプーチン大統領が初めて北方領土の択捉島を訪問したことは容認できない。ロシアは、歴史的にも国際法上も日本の領土である北方領土を今も不法占拠し、軍事拠点化も進めている。不法占拠を既成事実化させようとする試みを許してはならない。加えて、中国と連携して日本に軍事的圧力を強めていることも警戒する必要がある。
北朝鮮は日本への攻撃も想定し、弾道ミサイルの発射を繰り返している。ロシアに協力してウクライナに兵を派遣した見返りに、ロシアからミサイル技術の供与も受けているという。中露朝の3か国が足並みをそろえて日本への圧力を強めている現状は、かつてないほどの脅威だ。国民の生命、財産を守るためには防衛力の強化が欠かせない。
長年、自衛隊にしか装備品を納めてこなかった防衛産業は、競争力を失って弱体化している。有事の継戦能力を高める上でも、防衛産業を育成することが急務だ。自衛隊による太平洋の守りは脆弱だ。離島にレーダー施設を整えるなど監視を強めるべきだ。



