高市早苗首相の公設秘書が、自民党総裁選や衆院選においてライバル候補や野党議員を標的にした中傷動画の作成・拡散に関与した疑惑が、週刊文春などによって報じられ、波紋を広げている。首相は特別国会で野党から追及を受ける中、事実関係を主観的に否定したり、論理をすり替えたりする答弁を繰り返し、自らを窮地に追い込んでいる。
疑惑の発端と首相の対応
疑惑は2025年9月の自民党総裁選にさかのぼる。首相の公設第一秘書である木下剛志氏がIT会社代表の松井健氏にSNS戦略を相談し、AIを用いて対立候補の小泉進次郎防衛相(当時農相)を中傷する動画を1日100本以上作成・拡散したとされる。動画では「カンペで炎上!」「世襲の操り人形」などの字幕が流されたという。さらに、林芳正総務相(当時官房長官)や、衆院選では枝野幸男元官房長官、岡田克也元外相らも標的となった。
高市首相が初めてこの疑惑に言及したのは5月8日の参院本会議で、立憲民主党の小島智子氏の質問に対し、「事務所の職員に確認したが、他候補のネガティブな情報の発信は一切行っていない」と完全否定した。しかし、その後の追及で答弁が揺れ、矛盾が露呈している。
孤立する首相の危機管理
首相は信頼できるチームを官邸に構築できず、問題を独りで抱え込んでいる。結果として場当たり的な判断を下し、危機管理の観点から程遠い対応を重ねている。各種世論調査では内閣支持率が下落傾向にあり、特別国会で議論されているSNS規制の最中に浮上した疑惑が、民主主義の根幹である選挙の公正さを揺るがしかねない事態となっている。
致命的な一言
首相は「私自身も秘書も面識のない方だ」と述べたが、報道によれば秘書と松井氏の間には複数回の接触があったとされる。この「致命的な一言」が、疑惑をさらに深刻化させている。側近や援軍も現れず、首相は孤独な戦いを強いられている。
政権の正統性が問われる中、首相はどこまで疑惑を晴らすことができるのか。今後の国会審議が注目される。



