前首相の石破茂氏は、いまの自民党内に広がる「アメリカに追随していれば保守」という風潮に対し、強い違和感を抱いている。石破氏は著書『保守政治家』(講談社)の中で、保守の本質は「寛容」であると説き、現在の自民党のあり方に疑問を投げかけている。
「保守はイデオロギーではなく、感覚であり、たたずまい」
石破氏は『保守政治家』で、保守について次のように説明している。
「保守というのはイデオロギーではなく、一種の感覚であり、たたずまいであり、雰囲気のようなものだ、ということです。皇室を貴び、伝統文化や日本の地方の原風景を大切にし、一人一人の苦しみ、悲しみに共感する。その本質は寛容です。相手の主張に対して寛容性をもって聞く、受け入れる度量を持つ、という態度こそ保守の本質です」
石破氏は、少数意見に耳を傾け、異なる価値観を受け入れる姿勢を重視する。その意味で、いま一部では「左翼」と同義に使われる「リベラル」とも本質を共有するとして、「保守とはリベラルのことである」と述べている。
「愛国を盾にしたレッテル張りは保守ではない」
石破氏は、愛国を盾に意見の異なる人を「反日」と非難したり、中国と親しく交われば「媚中」と切り捨てたりする言説が、SNSだけでなく現実の政治空間でも目立つようになったと指摘する。こうした姿勢は保守とはみなさないとし、次のように語る。
「保守と言うのは、本来、性急な変化を希求する『革新』に対してブレーキをかけつつ、今までの社会の良さを残しながら漸進しようとするスタンスです。保守は、ですからあくまで『ありよう』や『態度』であって、そのものがイデオロギーではありえないし、一定のイデオロギーを前面に押し出して性急な変化を求めるのであれば、それはおそらく『右翼』と言うのでしょう」
父から受け継いだ「寛容な保守」
石破氏は、父である石破二朗元政治家の影響を大きく受けたという。父は戦前の内務官僚であり、内務官僚は寛容で柔軟性があるリベラルな人が多かったと述べる。戦前、ドイツのヒトラー・ユーゲントが来日した際、父は歓迎行事を任されたが、不愉快だったらしく、当時の部下に「お前たちよく聞け、こんな奴らと仲良くするとロクなことは無いぞ」と言ったという。
石破氏は、志半ばで退陣し、現在の高市早苗政権のもとでは反主流派、さらには党内野党のレッテルも貼られている。しかし、石破氏は自らの考える「保守」と自民党のあるべき姿について、引き続き語っている。



