広島市長が職員研修での教育勅語引用を中止 15年間続けた市長講話も廃止へ
広島市の松井一実市長は3月27日の定例会見において、新規採用職員の研修において「心の持ち方」として引用してきた戦前・戦中の「教育勅語」の使用を取りやめる考えを正式に表明しました。さらに、就任翌年の2012年から継続してきた市長講話そのものも新年度から廃止すると明らかにしました。
「働きぶりの考え方は十分行き渡った」と市長が説明
松井市長は会見で「15年続けて、私の働きぶりの考え方は十分行き渡った」と述べ、引用中止の理由を説明しました。これまで市長は、教育勅語を「再評価すべきとは考えていないが、評価してもよい部分があったという事実を知っておくことは大切」と位置づけ、研修資料の一部として使用してきました。
しかし今回、「資料を使うかどうかは全然問題ない」としつつも、「この資料を使うことで政争の具にされるのはやめてほしいという気持ち」と語り、引用中止に至った背景を明かしました。市によれば、4月から始まる新年度の職員研修で配布する資料からは、教育勅語の引用が完全に排除される見込みです。
市民団体からの撤回要求と憲法との整合性問題
教育勅語は、日本国憲法と相容れないとして国会で排除・失効が決議されている文書です。これを受けて、複数の市民団体が松井市長に対して「憲法の理念に相いれない教育勅語を引用することは違憲」と強く抗議し、撤回を求めていました。
昨年4月の職員研修で配布された資料では、「生きていく上での心の持ち方」と題した項目において、教育勅語の一節「爾臣民 兄弟に 友に 博愛 衆に及ぼし 学を修め 業を習い 知能を啓発し 進んで公益を広め 世務を開き」が英訳付きで掲載されていました。この部分は、「我々の先輩が作り上げたもので良いものはしっかりと受け止め、また、後輩に繫ぐ事が重要」という説明文とともに紹介されていたのです。
長年にわたる継続と今回の決断の意味
松井市長が教育勅語を引用し始めたのは、2011年の市長就任直後の2012年からです。以来、15年間にわたり新規採用職員に対する市長講話の資料として使用され続けてきました。この長期間の継続は、市長自身の教育観や歴史認識を職員に浸透させる意図があったとみられます。
しかし、近年では教育勅語を巡る社会的な議論が活発化し、憲法との関係性が厳しく問われるようになりました。特に広島市は「平和文化都市」としてのイメージが強く、被爆者をはじめとする市民からは、戦前の価値観を想起させる文書の使用に対して批判的な声も上がっていました。
今回の決定は、そうした内外の圧力と、市長自身が「考え方は十分行き渡った」と判断したことの両方が影響したものと考えられます。これにより、広島市の職員研修からは、戦前の教育理念を直接引用する要素が完全に排除されることになります。



