鈴木知事は1日、道庁で読売新聞のインタビューに応じ、「副首都構想」の実現に向け、構想を主導する大阪府と結んだ連携協定について「非常に大きな一歩だった」と話した。副首都に指定されれば、道民にとっては「みんなで北海道経済を成長させようというメッセージになる」とし、大阪と協定に基づく協議を進めながら指定を目指す考えを示した。
大阪府との連携協定締結の経緯
鈴木知事は8月31日、吉村洋文・大阪府知事(日本維新の会代表)と、ともに副首都を目指し協力する協定を全国に先駆けて締結している。協定については「副首都になる上で、大きな可能性が開かれた」と評価した。
吉村氏とは昨年の大阪・関西万博の時などに会い、政治経済の東京一極集中の是正について「前々から話をする」仲だった。維新が昨年、同構想を掲げて以降は「副首都は大阪だけじゃない方がいい」と吉村氏に度々伝えてきたという。7月の関連法案成立後にも「北海道札幌がふさわしいと本人に言った」と明かし、これまでの意見交換が迅速な協定締結につながった可能性をにじませた。
北海道の強みと副首都の意義
協定を通じ、吉村氏とは「北海道の可能性ということについてはかなり目線が合ったんじゃないか。協力していく環境が整った」と話した。また鈴木知事は、北海道が食やエネルギー分野で「今の時点でも日本を支えている」と語った。道の食料生産は、道民の自給率では200%に及ぶほど高く、電力では再生可能エネルギーを本州に融通する送電ケーブルの整備も進められているためだ。
その上で、鈴木知事は「副首都という形でさらにそれを加速するのが重要だ」と述べた。「広大な大地に開発が進んで150年以上。北海道がもう一段新しい形を示すなか、国としても道をもう一回位置づけることは大切だ」とし、副首都の指定を受けることで「人口も減って、大変なこともあるが、いや違うと、国全体への貢献も期待されているし、大事な産業をさらに発展させていこうというメッセージになると思う」と語った。
鈴木知事の2期目の任期満了は来年4月。来春の知事選への出馬については、「今与えられた知事としての仕事をしっかりやっていく、その中で自身のことは考えていく」と述べるにとどめた。
一問一答:副首都構想の全体像
――知事が考える副首都構想の全体像と目指す理由は。
副首都法は、東京圏での大規模災害時のバックアップと、東京一極集中から多極分散型の経済成長に変えようというもので、北海道は適地と考える。首都直下型地震や富士山噴火では東京との同時被災リスクが低いほか、台風の接近も少ないことは北海道の大きな強み。また経済規模や人口でも国内有数で、北海道開発局など道単位で完結する国の出先機関が集積しており優位性がある。加えて、食料自給率は200%を超え、半導体や洋上風力など、安全保障上重要な分野では既に日本を支えており、副首都という形で更に加速させることが重要だ。
――北海道の未来に向けた副首都構想の位置付けは。
具体的には今後検討するが、地域の声が国に届く点で従来と異なる。例えば、これまでも「国家戦略特区」の枠組みでGX(グリーントランスフォーメーション)や宇宙など成長分野の規制緩和を進めてきたが、あくまで限定的かつ実証的だった。副首都の大きな違いは、企業の道内進出を後押しするため一部国税を優遇するなど、これまで以上の税制面の優遇も要望できるということで、道内への本社機能移転が増えるいま、北海道から首都圏を支えることにつながる。
――札幌以外への波及効果について。
産業集積地の形成を図る「戦略産業クラスター計画」や、地方活性化に向けた「地域未来戦略」との連動が重要だ。関連法では2031年3月末までが集中推進期間に位置付けられており、その間に交通インフラの複合化など投資や対応が必要と考える。また大災害など最悪の事態を想定し、自衛隊の機能を強化することは、駐屯地を多く有する北海道にとって皆さんの命を守ることにも結び付く。
――全国に先駆けて大阪府と連携協定を結んだが、知事として手応えは。
吉村知事とは以前から東京一極集中の是正を話し合ってきた。副首都構想が浮上してからは、大阪だけでなく、北海道や九州にも大きな可能性があるとの考えも伝えていた。協定締結は非常に大きな一歩で、指定に向けて切磋琢磨しつつ、経済分野での相乗効果など協力できる環境は整った。
――吉村知事は「経済を多極化し、日本を発展させる」との考えだ。
私も同じ考えだ。首都圏の発展も大事だが、他地域にポテンシャルがないかというとそうではない。北海道では食やエネルギーなど強みを生かし、一つの塊として成長することが重要だと思っている。その手法の一つとして、バックアップと多極成長型の経済という副首都が位置付けられる。
――副首都構想は長期的な政策。知事は来春の知事選に出馬するのか。
これまで北海道の価値を上げるべく、食やエネルギーの分野で力を発揮できるよう働いてきた。まずは知事として目の前の仕事に全力で取り組み判断したい。
道内市長の反応と今後の展望
道と大阪府が副首都構想実現に向け連携協定を結んだことを受けて、札幌市の秋元克広市長は1日の定例記者会見で、「行政機能や企業活動のバックアップについては、拠点となっている札幌市が一定程度中心的な役割を果たす必要がある」との考えを示した。一方で、「多極分散型経済圏」形成の分野では、半導体や食料供給などを例に挙げ、「札幌だけでは担っていけない。周辺都市も含めた道全域でそれぞれの役割を果たしていく必要がある」と話した。
旭川市の今津寛介市長は8月31日の定例会見で、副首都を目指す道などの方針について「ぜひ進めていただきたい。私たちもしっかり応援したい」と歓迎する姿勢を示した。今津市長は、旭川市や上川地方には食料供給基地の機能があり、空港や陸上自衛隊の拠点などがあることも挙げて「バックアップ機能を果たしていくことができるのではないかと考えている」と述べた。
道は、1日の道議会総合政策委員会で、副首都指定による防災機能の強化や経済活性化への期待を改めて示したほか、道民への周知を進めるとした。道議からは「道民の理解促進にどう取り組むのか」との声が上がり、道総合政策部の担当者は、指定されれば、道内の防災・交通施設の整備のほか、半導体などの成長産業の振興による道内経済の活性化につながると説明。「丁寧な情報発信に努めていく」とした。



