広島平和記念資料館の入館料200円、値上げか無料化かで割れる 被団協ノーベル賞で来館者急増、年内に方向性を示す
広島平和記念資料館の入館料200円、値上げか無料化かで割れる 年内に方向性

広島市が、広島平和記念資料館(広島市中区)の入館料のあり方を見直す検討を始める。現在の入館料は大人200円で、平和・戦史関係の資料館の中では安い。混雑対策や運営コストの上昇を理由に値上げを求める意見がある一方、無料化を求める声もあり、年内に方向性が示される見通しだ。

松井一実市長は4月上旬の記者会見で「維持管理や改修費用が足りない場合、(資料館に)来る方から出していただくこともある」と述べ、入館料の議論の必要性を指摘。外国人観光客や地元以外の訪問客に高い料金を設定する「二重価格」にも言及し、「多様な視点での検討がいる」と話した。

来館者過去最多、運営費が膨張

日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞などが追い風となり、資料館の来館者は急増。2025年度には過去最多の約258万人が訪れた。市は2024年からオンラインの販売・予約システムを導入し、開館時間も朝夕それぞれ1時間延長。その時間帯はネット予約者のみ入場できるようにしたが、人件費などの経費が膨らみ、光熱費の上昇も追い打ちをかけた。2024年度は入館料収入が約3億2000万円に対し、管理運営費は約4億7000万円に上り、市の財政負担は増えている。

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市平和推進課の担当者は「入館料の議論を避けては通れない状況だ」と話す。

料金の推移と無料化の経緯

現在の料金は大人(大学生以上)200円、高校生100円、中学生以下は無料。1955年の開館当初は大人(13歳以上)20円で、1972年に大人(16歳以上)50円、小中学生30円、6歳以下無料となった。現行料金は2016年度からで、市は財政負担の削減のため、長崎市の長崎原爆資料館(大人200円)を参考に4倍に引き上げた。

市は過去に完全無料化も検討した。より多くの人に訪れてもらおうと、2005年度一般会計当初予算案で無料化を提案したが、市議会の反対で頓挫した。

値上げか無料化か、関係者の意見も割れる

庁内や資料館関係者の間でも意見は分かれている。資料館幹部は「劣化が進む被爆資料の保存にも経費がかかる。質の高い展示を提供するため、来館者にもう少し負担してもらうのはありだと思う」と語る。一方、市幹部は「何より大切にしているのは被爆の実相をより多くの人に伝えることで、無料でもいいと思う」と話す。

市の外郭団体で資料館を運営する広島平和文化センターは、被爆100年に向けた有識者らの「広島市平和文化のまちづくり懇談会」で8月から検討を本格化させる。来館者1000人を対象に6月上旬から実施した入館料の妥当性などを尋ねるアンケート結果を懇談会に共有し、年内に方向性をまとめる方針。入館料の変更には市条例の改正が必要になる。

公共施設の運営に詳しい立命館大政策科学部の森裕之教授は「より質の高い展示体験を提供することを目指す上で、来館者により多く負担してもらう考え方は合理的だ。一方で、展示を多くの人に見てもらうことを重視するのであれば、極端に言えば無料でもよいだろう。食料品や生活品などでは値上げが相次いでいるが、入館料は単純な金額の増減だけで論じられる話ではない」と指摘する。

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他の平和・戦史資料館は

長崎市は今年度、約170の公共施設の入場料や使用料を値上げしたが、長崎原爆資料館は大人200円に据え置いた。市財政課は「施設運営費は上がっているが、平和文化の発信が使命であることを重視した」としている。知覧特攻平和会館(鹿児島県南九州市)、周南市回天記念館(山口県周南市)、沖縄県平和祈念資料館(沖縄県糸満市)の大人料金は500~300円。戦艦「大和」を紹介する「大和ミュージアム」(広島県呉市)は今年4月のリニューアルに合わせ、一般向けを従来の2倍の1000円に引き上げ、呉市内在住者は500円に据え置いている。

広島平和記念資料館は原爆の惨状を伝えるため平和記念公園内に建設され、1955年に開館。本館は建築家・丹下健三の設計で、2006年に戦後初の国の重要文化財に指定された。被爆者の遺品など約9万2000点を所蔵し、広島平和文化センターが指定管理者として運営している。