「アメリカ湖」拒否のMapQuest、App Storeランキング1位に 忘れられていた老舗地図アプリ
「アメリカ湖」拒否のMapQuestがApp Store1位に

米国のドナルド・トランプ大統領が8月27日に署名した「オンタリオ湖」を「アメリカ湖」へ名称を変更する大統領令が、地図サービスを提供するIT企業にも影響を与える中、表記変更の拒否を表明した地図アプリ「MapQuest」が注目を集めている。9月1日には、App Storeの無料アプリランキングで1位を獲得した。

MapQuestとは

MapQuestは、米国の広告プラットフォーム企業であるSystem1傘下のGIS企業。もともとは1996年に登場したデジタル地図の老舗で、2000年ごろには多くの人が使うトップクラスの地図サービスだったという。

日本でも「iモード」端末(01年発売)などが普及するまで、PCで地図や「乗換案内」の画面をプリントアウトして目的地まで持ち歩く人が多かったが、その頃に米国で同じような使われ方をしていたのがMapQuestだった。しかしスマートフォンやGPSの登場後はすっかり存在感が薄れていたようだ。

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表記変更を拒否

米Los Angeles Times誌は、8月30日の記事で「多くの人にとって、MapQuestの政治的な立場は、MapQuestがまだ存在しているという事実ほどの驚きではなかった」としている。またMapQuestがApp Storeの無料アプリランキング1位を獲得したことについて、米The Washington Post誌は「米国とカナダの両方でApp Storeの無料アプリランキング1位をMapQuestが獲得したのは、ここ30年で初めて」と報じている。

この数日前、MapQuestはトランプ大統領の一方的な名称変更に反発し「オンタリオ湖の名称は変更しません。お好きなように名前をつけてください」とXにポスト。利用者が地図の表記を変更できるジョークツールまで公開した。さらに、ツールを紹介したポストに添付した作例には「Lake Are We Doing This Again?(またやるの? 湖)」という皮肉も。トランプ氏が25年に「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に改名させた件を含めて揶揄していた。

他社の対応と今後の懸念

一方、米Googleは8月29日に「Googleマップ」の表記を「アメリカ湖」に変更した。カナダのユーザーに対しては引き続き「オンタリオ湖」と表記し、米国を含むそれ以外のユーザーには「アメリカ湖(オンタリオ湖)」と併記する形とした。またAppleについても、米Bloomberg誌のMark Gurman編集長のポストによると、Googleと同様の対応をする模様。ただし米FOXニュースなどはこの件でトランプ大統領がAppleと直接話をしたと伝えており、ネット上ではこれをAppleに対する圧力と受け取った人も多いようだ。

そんな状況の中、表記変更に反対を唱えたMapQuestのランキング1位は、トランプ大統領のやり方に疑問を持つ人々の支持を集めた結果といえる。ただし、大統領令により米地質調査所(USGS)の地名情報システムが変更されている以上、今後は技術的、あるいはビジネス上のトラブルも懸念される。例えば、他社の地図と表記が異なることによるシステム上のトラブルが考えられる。他にもネット上では連邦政府関連のビジネスからMapQuestが締め出されるリスク、政権あるいはその支持者らによって政治的な圧力を受ける可能性なども指摘されている。

もっともMapQuestはすべて承知で反発している可能性が高い。なぜなら、メキシコ湾の時にGoogleやApple、Microsoftなど主要企業はすべて表記を変更したが、MapQuest上ではいまも「メキシコ湾」単独表記のまま。前例があった。結果として、「アメリカ湖」を巡る騒ぎの中でMapQuestは新たに数十万回もダウンロードされ、認知度は大きく向上した。一度は忘れられかけた地図アプリは、このチャンスを生かせるのだろうか。

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