海面上昇の影響で、日本の国土が狭まっている。日本最南端の沖ノ鳥島(東京)は、国土面積を上回る約40万平方キロに及ぶ排他的経済水域(EEZ)の基点だが、将来完全に水没する可能性がある。
千里浜海岸で通行止め増加
日本で唯一の「車で通行できる砂浜」がある石川県中部の千里浜海岸(全長約8キロ)では、近年、一部区間を含め通行止めとなる日が増えている。今年は7月末までに計106日と、過去最多だった昨年(198日)に匹敵するペースだ。
背景には砂浜の減少がある。40年前に約60メートルあった砂浜の平均幅は20メートル超減り、「悪天候時に波が護岸に迫り、安全な通行を確保できない日が増えている」と県河川課の岡本美由紀参事(53)は話す。
海面上昇と砂浜消失の関係
砂浜減少の要因について、海上・港湾・航空技術研究所の伴野雅之グループ長(43)は「気候変動の影響で海面が約10センチ上昇しており、砂浜の減少が助長されている可能性が高い」とみる。県は今年度、同研究所の見解を踏まえ、海面上昇の影響調査を始めた。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2021年の報告書によると、世界の平均海面水位は18年までの約120年間で約20センチ上昇した。世界の平均気温が2100年までに産業革命前の水準(1850~1900年の平均)から約2度上昇すれば、海面はさらに約40センチ上昇すると予測する。
日本の砂浜は大幅に失われる恐れがある。有働恵子・東北大教授(50)(海岸工学)らがIPCCの予測を基に分析した結果、1990年頃に計278平方キロあった砂浜は、2100年に74%(約2度上昇の場合)が消失すると推計された。有働教授は「すでに10~30%が失われた可能性がある。消失に伴い、砂浜が持つ津波や波浪の被害を軽減する効果も失われてしまう」と懸念する。
海抜ゼロメートル地帯の拡大とEEZへの影響
標高が海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」も、3大都市圏を中心に拡大する。東京都は2030年代までに東京港の防潮堤約24キロを60~80センチかさ上げする計画だ。清水有人・都水防対策担当課長(45)は「長期的な視点で対策する必要がある」と強調する。
安全保障政策に直結するEEZにも影響が出かねない。沖ノ鳥島は満潮時、北小島と東小島しか海面上に残らず、04年の民間調査で満潮時の高さはそれぞれ16センチと6センチ。政府は消波ブロックとコンクリートで補強するが、将来完全に水没する可能性がある。
EEZは国連海洋法条約で定められるが、海面上昇で海岸線が後退した場合の明文規定はない。政府はEEZを維持できるよう、上昇前の海岸線を基準とする法解釈の採用を各国に呼びかけてきた。
国際司法裁判所(ICJ)は昨年、「気候変動に関する勧告的意見」として、上昇後も領海やEEZを変更する義務はないとの見解を示した。日本の主張が認められた形だが、法的拘束力はない。外務省幹部は「国際会議などで地道に働きかけを続けていく必要がある」と話している。



