朝鮮半島が記録的な酷暑に見舞われる中、北朝鮮指導部は夏バテ予防として犬肉のスープ「補身湯(ポシンタン)」や若鶏と高麗人参のスープ「参鶏湯(サムゲタン)」を家庭で食べるよう推奨している。
韓国では熱中症で23人が死亡し、南東部の慶尚南道梁山では国内観測史上最高気温を7月31日から3日連続で更新、8月2日には42.5度を記録した。北朝鮮の国営メディアも、同国でも最高気温40度を観測したと報道している。
国営メディアが料理のヒントを発信
朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は2日、医師の話として、補身湯は「栄養補給に効果的だ」と伝えた。国営朝鮮中央通信(KCNA)は5日、もち米、ナツメ、滋養強壮作用のある高麗人参を詰めた鶏肉のスープ「参鶏湯」を食べるよう提案した。
KCNAは、「朝鮮には『以熱治熱(イヨルチヨル、熱をもって熱を治す)』ということわざがある」と説明し、参鶏湯を韓国との軍事境界線のすぐ北側に位置する南部・開城(ケソン)の名物料理として紹介した。さらに、参鶏湯に使われる開城産の高麗人参について、「この地域特有の土壌や水質、栽培方法によるものだ」とし、「比類のない薬効」があると誇らしげに説明。「朝鮮人は、夏の最も暑い時期に熱い料理を作ることを健康に良い習慣とみなしてきた」と付け加えた。
暑い時の熱い料理、周辺国との違い
暑い時に熱い料理を食べるのは、体の熱を冷ます冬瓜(とうがん)を使ったスープを夏の健康食とする中国やベトナムなどとは対照的だ。かつて韓国でも犬肉は夏の味覚とされていたが、2027年2月から食用を目的とした犬の飼育、と畜、流通、販売が全面的に禁止される。
専門家らは、孤立した北朝鮮は、人為的要因による気候変動の影響で激しさを増しているとされる熱波に対する備えが著しく不足していると指摘する。米シンクタンク「スティムソン・センター」の韓国プログラム上級研究員レイチェル・ミニョン・イ氏はAFPの取材に対し、北朝鮮の国営メディアが水や電力の供給を確保できていると強調しているのは、「水と電力の逼迫(ひっぱく)を示唆している」と指摘。「北朝鮮は韓国が備えているようなインフラを欠いているため、北朝鮮人は韓国人よりも暑さで苦しんでいる可能性が高い」と述べた。
食料不足と電力不足の実情
国連世界食糧計画(WFP)によると、北朝鮮の人口およそ2600万人のうち、40%以上が十分な食べ物を口にできず、栄養失調に苦しんでいる。韓国人は輸入したコーヒー豆で作られたアイスラテを飲み、イタリアンジェラートや南米原産のアサイーを使ったアサイーボウルなどを堪能しているが、それでも韓国当局はエアコンの効いた場所に避難するよう繰り返し呼び掛けており、野球場で熱中症とみられる症状で男性が倒れる事態も起きた。
だがイ氏によると、北朝鮮では工場さえ「慢性的な電力不足」のためフル稼働できないとされる。「このことは平壌市民以外の多くの北朝鮮人がエアコンや扇風機にさえ使えず、現在の熱波に耐えるのが特に困難であることを示唆している」と同氏は指摘した。



