インド南部タミルナド州にある同国最大の原子力発電所、クダンクラム原発を標的とした大規模なサイバー攻撃により、約1万9000件の機密ファイルが外部に流出したことが明らかになった。ロイター通信が15日に報じたところによると、流出したファイルには換気・冷却システムの設計図とみられる極めて機密性の高い資料が含まれており、原発の安全性に深刻な懸念を生じさせている。
ハッカー集団「ワールド・リークス」の犯行声明
今回の情報流出は、ハッカー集団「ワールド・リークス」が匿名性の高いインターネット上のダークウェブにファイルを投稿したことで発覚した。同グループは身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウェア」を用いた攻撃で知られており、過去にも複数の重要インフラを標的にしてきた経歴がある。ロイターの調査によると、流出データには制御室のフロアレイアウトや会議の記録なども含まれており、内部の運用手順やセキュリティ体制に関する情報も漏洩した可能性が高い。
リライアンス・グループが「部分的な流出」を認める
クダンクラム原発の建設請負業者である地元財閥リライアンス・グループは、政府に対し「部分的な流出」が発生したと報告した。同社の広報担当者は「事態を重く見ており、現在詳細な調査を進めている」とコメントしている。しかし、流出したファイルの範囲や影響について具体的な説明は避けており、政府関係者からは「情報管理の甘さ」を指摘する声も上がっている。
原発の安全運転への影響は?
クダンクラム原発はロシア型の加圧水型原子炉(VVER-1000)を採用しており、インドの電力供給において重要な役割を担っている。今回流出した換気・冷却システムの設計図は、原子炉の安全運転に直結する設備であり、悪用された場合、物理的なテロ攻撃やシステム侵入の足がかりとなるリスクがある。原子力規制当局は「現時点で原発の運転に直接的な支障はない」としているが、専門家からは「設計図が公開されたことで新たな攻撃手法の開発を許す可能性がある」と警鐘が鳴らされている。
インド政府の対応と今後の課題
インド政府は国家安全保障の観点から事態を極めて深刻に受け止め、関係省庁によるタスクフォースを設置して調査を開始した。また、同原発を運営するインド原子力発電公社(NPCIL)はセキュリティ体制の見直しを急いでいる。一方で、サイバーセキュリティ専門家は「重要インフラに対する攻撃は世界的に増加傾向にあり、今回の事件はインドだけでなく国際社会全体の警鐘となる」と指摘する。インドでは近年、電力網や金融システムへのサイバー攻撃が相次いでおり、今回の原発情報流出はその脆弱性を改めて浮き彫りにした。



