移民問題で揺れるドイツで今、大きな課題となっているのが、ドイツ語が話せない子どもたちへの教育だ。ドイツ西部の工業都市デュイスブルクにある公立の基礎学校「レインボー・スクール」では、6~10歳の児童約450人のうち約95%が、本人または両親の一方が外国籍で生まれた「移民の背景」を持つ。これはドイツでも最も高い割合の一つだ。
多国籍の児童が集う教室
1月中旬、4年生の算数のクラスを見学した。児童27人のうち25人が、ブルガリアやアフガニスタンなど11カ国にルーツを持っている。黒板には「70-20=」「700-200=」「7000-2000=」と問題が書かれ、児童がドイツ語で声を出して読み、解答を書き込んだ。教室前方には「ヘルパー」を意味する「H」の文字が書かれたボードがあり、問題を解き終えた児童が他の児童のサポートに回るシステムが取られている。
両親はシリア人で、内戦の影響で避難先のモロッコで生まれたナチャット君(11)は、「得意な科目はドイツ語と算数。将来はサッカー選手か、人を助ける警察官か薬剤師になりたい」と楽しそうに語った。
個別プログラムとドイツ語学習の長期化
しかし、クラス全員が算数の問題をスムーズに解けるわけではない。ドイツ語の理解度に差があるため、学校は児童ごとに個別の学習プログラムを用意し、ドイツ語学習に最大2年をかけることもある。レインボー・スクールの教員は、「言語の壁が学習の遅れにつながらないよう、一人ひとりに合わせた指導が欠かせない」と話す。
ドイツ全体では、移民の子どもが急増する中で教育現場の負担が増大している。連邦統計局によると、2025年時点でドイツの学校に通う移民背景を持つ子どもの割合は約40%に達し、特に都市部ではその傾向が顕著だ。
受け入れ制限の議論も
こうした状況を受け、ドイツ国内では移民の受け入れを制限すべきだという議論が強まっている。メルツ政権は厳しい移民・難民政策に舵を切り、極右政党の台頭も背景に、統合政策の見直しが進む。教育現場では「言語習得のためのリソースが不足している」との声があり、一部の政治家は「移民の子どもが増えすぎると、教育の質が低下する」と懸念を示す。
一方で、専門家は「移民の子どもへの教育投資は将来の社会統合に不可欠」と指摘する。国士舘大学の鈴木江理子教授は「外国ルーツの子どもが多い日本の学校でも同様の課題がある。ドイツの事例は参考になる」とコメントしている。



