東南アジアの電気自動車(EV)市場で、中国メーカーの存在感が急速に高まっている。2024年第1四半期のEV販売台数は前年同期比で約2倍に拡大し、そのうち中国ブランドが実に75%のシェアを占めた。タイ、インドネシア、マレーシアを中心に、政府の補助金政策や充電インフラ整備が追い風となり、市場は急成長を遂げている。
タイ市場での中国勢の躍進
タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、EVシフトの最前線にある。タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVとする目標を掲げ、購入補助金や輸入関税の引き下げなどの優遇策を実施。これにより、中国のBYDや長城汽車、上海汽車などが相次いで進出し、現地生産も開始している。2024年上半期のタイ新車販売に占めるEVの割合は12%に達し、その大半を中国メーカーが占めた。
一方、長年タイ市場を支配してきたトヨタやホンダなどの日本メーカーは、HV(ハイブリッド車)に注力する戦略をとってきたが、EV投入の遅れから苦戦を強いられている。日本メーカーのEV販売シェアはわずか5%未満にとどまり、巻き返しが急務となっている。
インドネシアとマレーシアの動き
インドネシア政府は、豊富なニッケル資源を活用したEVバッテリー産業の育成に力を入れており、中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションなどが大型投資を決定。国内でのEV生産を促進するため、輸入EVに対する関税優遇や、バッテリー生産に対する税制優遇を打ち出している。これにより、中国メーカーの進出が加速し、2024年のEV販売台数は前年の3倍以上となる見通しだ。
マレーシアでは、国産車メーカーのプロトンが中国の吉利汽車と提携し、EV生産を開始。政府も2030年までにEV販売比率を15%に引き上げる目標を掲げ、充電インフラ整備に約1億ドルを投じる計画だ。中国メーカーに加え、韓国のヒョンデや独BMWも市場参入を進めている。
日本メーカーの対応と課題
日本メーカーは、東南アジア市場でのEVシフトの遅れを取り戻すため、戦略の見直しを迫られている。トヨタは2026年までに東南アジア向けのEVを10車種投入する計画を発表。ホンダもタイでEV生産を開始し、2025年までに新興国向けの低価格EVを投入する方針だ。しかし、中国メーカーが既に現地生産と販売網を確立しており、価格競争力で劣る日本メーカーの巻き返しは容易ではない。
今後の市場展望
調査会社の予測によると、東南アジアのEV市場は2025年には現在の2倍以上の規模に成長し、年間販売台数は100万台を超える見通し。中国政府の輸出促進策や、東南アジア各国の規制強化も市場拡大を後押しする。一方で、充電インフラの不足や、バッテリー価格の変動が課題として残る。
「東南アジアは、EV市場の成長において世界で最もダイナミックな地域の一つです。中国メーカーが先行していますが、日本や韓国メーカーも巻き返しを図るでしょう」と、アジア開発銀行のエネルギー専門家は述べている。



