2016年7月15日夜、トルコ軍の一部がクーデターを試みた事件から10年が経過した。日付が変わった16日未明、CNNトルコがスマートフォンを使って中継したエルドアン大統領の訴えに背中を押されるように、各地で市民が街頭へ向かった。最大都市イスタンブールのボスポラス海峡にかかる大橋では、銃火の中へ走っていった一人の建築家がいた。
建築家が語るクーデターの夜
イスタンブールの職場にいた建築家アフメト・アルクルチさん(41)はその夜、妻から電話で「橋でテロ事件が起きているらしい」と知らされた。自宅へ戻ってテレビをつけると、国営放送でクーデター部隊の声明が読み上げられていた。ボスポラス海峡の大橋は封鎖されていた。
じっとしていられないと思った。その時、友人からエルドアン氏の呼びかけの映像がスマホに届いた。アルクルチさんは「私たちの最高司令官(エルドアン大統領)のために」と恐怖を感じずに橋へ向かったという。
市民の波がクーデターを阻止
エルドアン大統領の呼びかけで集まった市民は、クーデター部隊と衝突した。この橋は後に「7月15日殉教者の橋」と改称された。クーデター未遂事件は、市民の抵抗によって鎮圧され、その後トルコでは大規模な政治浄化が行われた。
連載「エルドアン氏のトルコ クーデター未遂から10年」では、あの夜を記憶する人々に取材し、民主主義と統治の現在地を追う。全5回の連載で、トルコの変化を多角的に検証する。



