中国のフォアグラ生産が急拡大し、世界最大の生産国であるフランスを追い抜く勢いを見せている。安徽省でガチョウ農場を営むリー・フォンシャン氏は、かつて貧しい生活を送っていたが、フォアグラ事業の成功により白いマセラティのSUVを乗り回すまでになった。彼の会社は昨年300トンを生産し、今年は500トンへの増産を計画している。一方、フランスの平均的な生産業者の規模は年間約10トンに過ぎない。
生産量急増の背景
過去10年間、中国では高級食材だったフォアグラが手ごろな価格の人気商品へと変貌した。レストランでは1切れ30~70元(約720~1670円)で提供され、フランスの15~40ユーロ(約2780~7400円)に比べて格安だ。フォアグラ炒飯や火鍋の具材として親しまれるほか、チェリー型やバラ型の冷凍デザートなど革新的な新製品も人気を集めている。
業界アナリスト5人の推計によると、中国の昨年のフォアグラ生産量は最大1万4000トンに達した可能性がある。これは2024年比約30%の急増であり、10年前の推計値2000トンから大きく伸びた。一方、フランスの昨年の生産量は前年比3%減の1万5044トンだった。フランスのフォアグラ産業団体CIFOGのファビアン・シュバリエ会長は「この急発展ぶりは心配だ。これほどの勢いで迫ってくるとは予期していなかった」と述べ、警戒感を示した。
輸出市場への進出
中国のフォアグラ輸出はまだ全体の5%未満だが、海外市場への意欲は強い。リー氏は昨年、ドバイへ6000缶を出荷した。中国最大のアヒルフォアグラ生産者「吉林正方農牧」のゼネラルマネジャー、ミン・ウェイ氏は年内に東南アジアと欧州向け輸出を準備中だと述べた。国営メディアは韓国への輸出契約が成立し、日本、ロシア、東南アジア企業とも交渉中だと報じている。
中国の農業コンサルティング会社BOABCの家禽アナリスト、ジョウ・モンハン氏は「中国は東南アジアや中東といった新興市場でフランスの強力なライバルになるだろう」と分析する。CIFOGのシュバリエ会長も、国際見本市に中国生産者が姿を現し始めていると認めた。
生産の実態と課題
中国の生産急増は手厚い補助金に支えられている。リー氏の場合、インフラコストやワクチン費用の50%以上が補助金で賄われる。また、過酷な労働も生産性向上に寄与している。スタッフ1人当たり400羽以上のガチョウを担当し、処理前の10日間はほぼ不眠不休で1羽に1日6回の強制給餌(ガバージュ)を行う。リー氏は「欧州の人々は今では大量のガチョウを育てることができない」と語る。
同農場で生産されるガチョウの肝臓は1キロ以上で、フランスのアヒル肝臓(500~550グラム)やガチョウ肝臓(750グラム未満)を上回る。リー氏はロボット企業と協力し、給餌作業の自動化を進めているという。
動物福祉への懸念については、中国の生産者は「中国国内で反対の声はほとんど聞かれず、需要は高まる一方だ」と一蹴する。また、中国産フォアグラの密輸が深センや香港を経由して月に最大10トンに上るとの指摘もあるが、中国農業省と税関当局はコメントを拒否した。



