現在、世界で最も優れたAI(人工知能)を開発する国は米国だが、その背後に中国の足音が迫っている。中国・上海で2026年7月に開かれた「世界人工知能(AI)大会」には、習近平国家主席も初めて参加し、中国国営新華社通信によると4日間で延べ40万人以上が来場した。
フィジカルAIと新興企業の躍進
会場では最新のAI活用例や開発中のモデルが展示され、特に注目を集めたのが急速に普及する「フィジカルAI」だ。配送センターのようなフロアでは複数のロボットがタオルやぬいぐるみなど形状の異なる商品を次々と仕分けし、パンをトーストして飲み物を注ぐ人型ロボットも朝食を準備した。こうしたAIロボットは実用化が進み、中国国内の薬局や売店で24時間態勢の商品取り出しや接客をこなしている。
電子決済アプリ「アリペイ(支付宝)」の運営会社は自社AIモデルを組み込んだ決済用AIを紹介。AIエージェントによるネット買い物代行が増える時代を見据え、誤った決済を防ぐという。
ある企業の担当者は「中国のAIは百花繚乱の段階だ」と話す。多様な分野でのAI開発と社会実装が人材や技術、データを蓄積し、中国全体のAIモデルの力を底上げしている。
「Kimi K3」が世界を驚かせる
大会の話題をさらったのは、新興企業の月之暗面(ムーンショットAI)が発表したAIモデル「Kimi K3」だ。米国の最先端モデルに迫る性能に世界が驚き、担当者は「世界一のAIモデルを作りたい」と語った。
中国の産業コンサルティング会社「ジャンシン(匠新)」の田中年一代表は「中国では注目産業に一気に人と金が集まり、生き残りをかけた競争が始まる。AI業界でも同じことが起きている」と指摘する。
中国政府は2026年から5年間の政策方針「第15次5カ年計画」でAIへの注力を明確にし、官民を挙げた取り組みが米国に迫るAI成長を促している。あるAI開発企業の担当者は「未来の発展をめぐって競争しているのは、実質的に我々と米国だけだ」と述べ、「もし負ければ、我々の世代が責任を果たさなかったことになる」と語った。
猛追する中国の足音は、米国の戦略にも影響を与え始めている。



