相続で揉めないためにできることはあるか。税理士の板倉京さんは「もめるのは“強欲だから”、“お金持ちだから”と思われがちだが、そうではない。相続の現場を見ると、知ってさえいれば回避できたケースが多くある」という。
夫の相続対策は妻が主導すべき
離婚は「3組に1組」といわれるほど身近な問題だが、夫の認知症と死はもっと高確率のリスクだ。認知症になる人は65歳以上で5人に1人、85歳を超えると3人に1人(厚生労働省推計)。亡くなるのは全員。女性のほうが長生きなので、多くの妻が夫の相続を経験する。
多くの人が、夫の相続対策や認知症対策は夫がするものだと思い込んでいる。しかし、夫自身は自分が認知症になっても死んでも困らない。だから「まだ大丈夫」「縁起でもない」と後回しにする。自分から積極的に動いてくれる夫は少数派だ。夫の認知症や相続で困るのは周りにいる家族、おもに妻である。だからこそ、夫の相続対策と認知症対策は妻が主導権を握るべきだ。
相続の困りごと3つ
相続で困ることは大きく次の3つ。それに備えていけばいい。
- ① 相続手続き
- ② 遺産分割
- ③ 相続税
① 相続手続き:人ひとりが亡くなった後の手続きは膨大だ。葬儀の手配から役所の手続き、財産の名義変更、公共料金の口座切り替え、生命保険の請求、クレジットカードや電話、インターネット、サブスクの解約など。何の情報もなしに行うのは本当に大変。
Cさんのケース
Cさん(55歳)は共働きの会社員で、お金はそれぞれ自分で管理していたため、夫の銀行口座や証券口座の情報はほとんど把握していなかった。夫が突然の心筋梗塞で亡くなった後、Cさんの苦行が始まった。
まず、夫の口座がいくつあるかもわからない状態からスタート。心当たりの銀行・証券会社を1つずつ当たって残高や自動引き落としを調べ、解約や名義変更の手続きを進める。仕事の合間を縫って書類を集め、金融機関を回る日々が続いた。さらに大変だったのが契約の解除。なんとなく把握していたスポーツクラブや動画配信サービスに加えて、細かいアプリや定期購入・何枚もあるクレジットカードをすべて洗い出し、解約の手続きをする。中にはネット経由でしか手続きができないものもあり、Cさんは夫のパソコンのパスワードさえ知らないため、解約ができず無駄な料金が引き落とされ続けたものもあった。「夫を亡くした悲しみの中で、仕事をしながらの相続手続き。本当に地獄でした」とCさんは振り返る。



