長期育休で給付金だけで生活可能か?年収別シミュレーションで検証
長期育休の給付金生活は可能?年収別試算

SNSで「長期の産休・育休」が話題となり、育休中の過ごし方に注目が集まっている。読者からは「長く休んだ場合の収入は?」「育休給付金だけで生活できるのか?」といった疑問が寄せられている。そこで、3人の子どもを続けて出産し、3年以上にわたり産休・育休を取得したモデルケースで、受け取れる給付金をファイナンシャルプランナー(FP)が試算した。

育休給付金の基本と他の制度との違い

育休給付金の正式名称は「育児休業給付金」で、雇用保険から支給される手当である。原則として、1歳未満の子どもを養育するため、給与の代わりに支払われる。給付金の金額と期間は、開始から180日間は休職前の給与の67%、それ以降の180日間は50%となる。給付金額は、休業開始前6カ月間の額面の賃金を180で割って日額を算出する。金額の算定には残業代や交通費、住宅手当などの諸手当が含まれるが、賞与は含まれない。また給付金には原則として社会保険料や税金はかからない。

一方、出産育児一時金は出産時に支払われる給付金で、1児あたり原則50万円、双子などの多胎児の場合は人数分が給付される。出産費用の平均は50万円以上であり、この経済的負担を和らげるための給付金である。さらに、2025年から始まった「出生後休業支援給付金」は、育休給付金(給与の67%)に13%を上乗せして80%受け取れるようにする制度で、実質的に給与の手取りの10割に相当する額を受け取れる。ただし、13%の加算は出産後の28日間のみで、原則として夫婦ともに14日間以上の育児休暇を取得するなどの条件がある。

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年収別シミュレーションの前提条件

今回のシミュレーションでは、以下のケースを想定する。第1子、第2子、第3子を続けて出産し、多胎児はいないものとする。出産後、次の子を出産するまで360日以上空いたものとする。約3年以上連続して産休・育休を取得する。出産育児一時金も別枠で加算する。出生後休業支援給付金は利用しない。

年収300万円の場合

年収300万円で賞与がない場合、毎月の給与は額面で25万円となる。この場合の育休給付金と出産一時金の目安は以下の通り。第1子出産後の180日まで:月額16万7,500円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額12万5,000円。第2子出産後の180日まで:月額16万7,500円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額12万5,000円。第3子出産後の180日まで:月額16万7,500円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額12万5,000円(※シミュレーション結果であり、実際の金額とは異なる場合がある)。

それぞれの子を出産した後、最初の180日間の収入はトータルで150万5,000円、以降の180日間はトータルで75万円となる。後半の180日間に大きく収入が落ちるため、これだけで生活していくのは現実的ではない。子どもが増えるにつれて家計の負担も増え、物価高も継続しているため、育休給付金や出産一時金だけでの生活は困難である。

年収400万円の場合

年収400万円で賞与が年間60万円の場合、賞与を除くと340万円となる。この場合の給付額は次の通り。最初の180日まで:月額18万9,610円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額14万1,500円。第2子出産後の180日まで:月額18万9,610円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額14万1,500円。第3子出産後の180日まで:月額18万9,610円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額14万1,500円(※シミュレーション結果であり、実際の金額とは異なる場合がある)。

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出産直後の180日間の収入はトータルで163万7,660円、以降の180日間はトータルで84万9,000円である。年収300万円の場合よりは多少増えるが、生活が大きく変わるほどではない。

年収500万円の場合

年収500万円で賞与が100万円の場合、賞与を除くと収入は400万円となる。この場合の給付額は以下の通り。最初の180日まで:月額22万3,333円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額16万6,666円。第2子出産後の180日まで:月額22万3,333円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額16万6,666円。第3子出産後の180日まで:月額22万3,333円+出産育児一時金50万円(1回のみ)。以降の180日まで:月額16万6,666円(※シミュレーション結果であり、実際の金額とは異なる場合がある)。

最初の180日間は月額22万円以上の育休給付金を受け取れるが、以降の180日間は月額約16万円に減少する。この場合も給付金だけで生活するのは難しく、ある程度の別の収入源が必要となるだろう。

まとめ

年収300万・400万・500万円のシミュレーション結果を比較すると、育休給付金は非課税ではあるが、制度上は就労時よりも収入が大きく下がることが分かる。金額の算定に賞与が含まれないため、賞与が多いほど給付額が下がる可能性があり、事前の資金計画が必要である。出産育児一時金や出生後休業支援給付金など他の制度を併用しても、それだけでは生活に十分な金額に届かないだろう。

長期育休を検討する場合は、「いくらもらえるか」だけでなく、「いつから給付率が下がるか」「復職時期をどうするか」「夫婦の収入・貯蓄でどこまでカバーできるか」を事前に確認しておくことが重要である。

(文・安藤真一郎、ファイナンシャルプランニング技能士2級、日商簿記検定2級)