壁にテープで貼っただけのバナナが9.6億円、富裕層が喜んで払う理由
壁にテープで貼ったバナナが9.6億円、富裕層が払う理由

2025年5月30日、フランス東部のポンピドゥー・センター・メスで、イタリアの現代美術家マウリツィオ・カテランによる作品《コメディアン》が盗難にあった。この作品は、本物のバナナを銀色のダクトテープで壁に貼り付けただけのインスタレーション作品である。評価額は620万ドル(約9.6億円)で、過去にも来場者に食べられるなど前例がある。

9.6億円のバナナ、これまでの経緯

《コメディアン》は2019年にアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで初公開され、最初の2点が12万ドル(約1300万円)、3点目が15万ドル(約1600万円)で完売した。その後、アート市場での需要が高まり、2024年のオークションでは約9.6億円(約624万ドル)で落札され、「世界一高額なバナナ」となった。

富裕層が大金を投じる理由

価値共創プロデューサーの西田理一郎氏は、超富裕層がこの作品に大金を支払うのは決して愚かな行為ではなく、極めて合理的な理由があると指摘する。「世界の超富裕層は、壁にダクトテープで貼られただけのバナナに約9億円を喜んで支払っている。彼らは決して狂っているわけではない。そこには極めて合理的な理由がある」と述べる。

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彼らはモノそのものではなく、「世界中が熱狂する現象のオーナーになりたい」と考えているという。つまり、物理的なバナナやテープではなく、その作品が生み出す話題性や歴史的な瞬間を所有することに価値を見出しているのだ。現代アート市場では、「スペック」のよさよりも、その作品がどれだけの人々の心を動かし、社会的な現象を引き起こしたかが重要視される。

「質の高いモノを、より安く」では勝てない

西田氏は、従来の「質の高いモノを、より安く」という価値提供では、このような超高額な価格帯では競争にならないと説明する。富裕層は、所有することで得られるストーリーや共感、そして社会的なインパクトを購入しているのである。

この作品「コメディアン」は、まさにその象徴と言える。バナナ自体は原価数十円だが、そこに付加された「価値創造の要素」によって、9.6億円という途方もない価格が実現したのだ。

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