社内で新規事業を立ち上げるイントレプレナー(社内起業家)に求められる能力は、生まれつき備わっているものではなく、実践を通じて身につけることができる。グロービス経営大学院特任副学長の田久保善彦教授は、多くのイントレプレナーが「走りながら」必要な力を習得していると指摘する。
ネットワーク構築の重要性
イントレプレナーとして成功するためには、社内外のネットワーク構築が不可欠だ。具体的には、社内で新規事業経験のある先輩が壁打ち相手になってくれること、他部署のメンバーとチームを組むことで視点が広がること、社外の起業家や専門家がメンターとしてアドバイスをくれること、他社のイントレプレナーと情報交換することで「自分だけではない」と思えることなどが挙げられる。
こうしたネットワークは、単なる知識や情報の交換に留まらない。悩みや不安を共有し、時には愚痴をこぼしながらも、「じゃあ次どうしようか」と一緒に考えてくれる存在がいることで、心理的な安全性が生まれる。「失敗したらどうしよう」ではなく、「失敗しても学べばいい」と思えるようになると、挑戦への一歩が格段に踏み出しやすくなる。
また、他の挑戦者の姿に触れることは、「自分もやってみていいのだ」という許可を自分に与えるきっかけにもなる。特別な経歴ではない人が一歩を踏み出して壁を乗り越えているのを見ることで、「あの人にできるなら、自分もやってみよう」と感じることができる。
自己研鑽(学び続ける姿勢)
何よりも重要なのが、自ら学び続ける姿勢である。多くのイントレプレナーが、業務の合間を縫って学びの機会をつくっている。ビジネススクールへの通学、社内研修への参加、外部セミナーやオンライン講座など、その手段はさまざまだ。
インタビューを通じて印象的だったのは、多くのイントレプレナーが忙しい業務の合間を縫って学びの時間をつくっていたことだ。具体的には、外部セミナーや勉強会など学べる場に足を運び、理論やフレームワークを学んだり、社内研修に積極的に参加し、他部門の知識や視点を取り入れたり、書籍や論文を読み、学んだことを自分のプロジェクトに当てはめて試してみたり、経営大学院に学びに行ったりしている。
ここで大事なのは、「学びそのもの」が目的になってしまわないことである。新規事業に携わる人たちは、学んだことをそのまま頭の中にしまっておくのではなく、実際のプロジェクトに持ち込み、「試してみる→振り返る→修正する」というサイクルを回している。例えば、セミナーで学んだフレームワークを翌週の顧客ヒアリングで使ってみる。書籍で知ったインタビューの問いかけ方を自分なりにアレンジして現場で試してみる。こうして、「学び」と「実践」を行き来する中で、知識は血肉化され、「自分なりのやり方」として身についていく。
「挑戦するから能力が身につく」
田久保教授は、イントレプレナーに求められる能力は、事前にすべてを身につけてから挑戦するのではなく、挑戦しながら身につけていくものだと強調する。能力があるからイントレプレナーが務まるのではなく、イントレプレナーとして挑戦するから能力が身につくという逆転の発想が重要だ。



