世界的なEV(電気自動車)シフトの加速により、自動車部品メーカーはかつてない構造転換を迫られている。エンジンやトランスミッションなど従来の内燃機関関連部品の需要は減少の一途をたどる一方、モーターやバッテリー、パワーエレクトロニクスといった電動化ユニットへの需要が急拡大している。この変化に対応できなければ、多くの部品メーカーが生き残りを危うくする可能性がある。
エンジン部品の需要減少と新たな事業領域
日本自動車工業会の統計によれば、2023年度の国内エンジン生産台数は前年比で約5%減少し、この傾向は今後も続くと予想される。これに伴い、ピストン、バルブ、燃料噴射装置などのエンジン部品を主力としてきたメーカーは、売上高の大幅な減少に直面している。例えば、ある大手ピストンメーカーは、2025年までにエンジン関連の売上高がピーク時の半分以下になると見込んでいる。
一方で、EV向け部品市場は急速に拡大している。モーターやインバーター、DC-DCコンバーター、バッテリーセル、バッテリーパック、熱マネジメントシステムなど、新たな部品需要が生まれている。調査会社の富士経済によると、世界のEV用モーター市場は2030年に約3兆円規模に成長する見込みだ。
部品メーカーの生き残り戦略:電動化へのシフト
こうした環境下で、部品メーカー各社は生き残りをかけて電動化事業へのシフトを加速している。具体的には、既存の技術を応用してEV部品に参入するケースが目立つ。例えば、エンジンのバルブタイミング制御技術をモーター制御に転用する、あるいは燃料噴射の高圧技術を水素関連部品に応用するなど、コア技術の転用が進められている。
また、M&Aや提携を通じて電動化関連の技術や生産能力を獲得する動きも活発だ。大手部品メーカーのデンソーは、2023年に半導体設計会社を買収し、EV向けパワー半導体の内製化を進めている。さらに、アイシンはトヨタ自動車と共同でEV用トランスアクスルの生産能力を増強する計画を発表した。
生き残りを左右する3つの要素
部品メーカーの生き残りを左右する要素として、以下の3点が重要だ。
- 技術の転用・応用力:内燃機関向けの既存技術を電動化関連にどれだけ転用できるか。例えば、摺動技術や熱マネジメント技術はEVでも重要な要素であり、応用範囲が広い。
- コスト競争力:EV部品は量産効果により価格が急速に低下している。中国メーカーなどとの競争に打ち勝つため、徹底したコスト削減が求められる。
- グローバルな生産・供給体制:EV需要は地域によってばらつきがある。特定地域に依存せず、グローバルに生産拠点を配置し、需要変動に柔軟に対応できる体制が必要だ。
今後の展望と課題
EVシフトは自動車産業のサプライチェーンを根本から変えつつある。部品点数が内燃機関車の約3万点からEVでは約2万点に減少すると言われ、部品メーカーにとっては事業規模の縮小を意味する。しかし、一方でバッテリーやモーターなど高付加価値部品へのシフトにより、収益構造を改善できる可能性もある。
業界関係者によれば、「2030年までに電動化対応ができない部品メーカーは、市場から退出を余儀なくされるだろう」との見方が強い。実際、欧州や中国では既に部品メーカーの淘汰が始まっており、日本でも同様の動きが加速すると予想される。
政府も電動化対応を支援するため、2024年度補正予算で電池関連のサプライチェーン強化に約1兆円を計上するなど、部品メーカーの事業転換を後押ししている。しかし、最終的には各社の戦略と実行力が問われることになる。



