地方の町工場が越境ECで奇跡の復活
日本のある地方都市の住宅地に、従業員40人ほどの小さな工場がある。創業は戦後すぐで、もとはガラスの文具を手がけていたが、車社会の到来とともに自動車用品メーカーへと転身。カップホルダーやドリンクホルダー、スマホホルダー、ナンバーフレームなど、地味ながらもカー用品を中心に製造してきた。
国内では大手カー用品チェーンに卸して堅実に商売を続けてきたが、新車販売の伸び悩みや人口減少、価格競争の激化により、経営者は「このままでは10年後、会社はないかもしれない」と危機感を抱いていた。
「海外で売る」という決断
そこで同社が選んだのは、アメリカ市場への越境ECだった。現地に営業所を構える余裕もなく、大手商社に頼むこともできない中、Amazon.comに自社で出品し、直接消費者に販売する方法を選択。設備も人も限られた地方の小さな会社が、ネット一本で地球の裏側の市場に挑んだ。
越境ECの鍵となったのは、人気車種にぴったり収まるカップホルダーの開発だ。この商品がアメリカの消費者に受け入れられ、徐々に売上を伸ばしていった。
三つの壁と年商100万ドルへの道
しかし、成功への道のりは平坦ではなかった。立ちはだかったのは、売上は伸びても利益が残らない、人材不足、在庫管理の難しさという三つの壁。広告を止めれば売上が落ち、続ければ利益が消えるというジレンマに直面した。
これらの壁を突破するために、データ活用とフレームワークの導入が重要だったと、Amazonトップコンサルタントの伊藤祐太氏は指摘する。伊藤氏は3年連続社内最高評価を獲得し、独立後は200社以上のEC企業を支援。自らも2人で年商10億円を突破した経験を持つ。
結果的に、同社は年商100万ドル(約1億5000万円)を達成。薄利多売の下請け業から、世界から指名買いされるブランドへと変貌を遂げた。
成功の要因と今後の展望
伊藤氏は『世界最強のEC戦略』(プレジデント社)の中で、この成功事例を紹介。同書では、データドリブン×仕組み化×AI活用を軸に、年商3億円の壁を越えるための6つのフレームワークを体系化している。
地方の中小企業が低コストで海外進出する方法として、越境ECは有力な選択肢であることを示したこの事例は、多くの製造業に勇気を与えるだろう。



