売却白紙から1年、パナソニックHDのプロジェクター事業の現状
パナソニックホールディングス(HD)が、プロジェクター事業の売却を白紙に戻してから1年を迎えた。売上高の9割を占める海外の市況悪化が続く中、海外企業の買収や新製品投入に乗り出しているが、成長に向けた投資を継続できるかが課題となっている。
パナソニックHDのプロジェクターは、2021年の東京五輪の開会式・閉会式や2025年大阪・関西万博などで採用された実績がある。業務用ディスプレーと合わせた売上高は年600億~700億円で、欧米を中心に海外が9割を占める。
売却合意から破談までの経緯
パナソニックHDは2024年7月、投資力のあるオリックスの下で「非連続な成長を目指す」として、1185億円で事業売却を決めた。しかし合意後、市況が急速に悪化。事業を引き継ぐ新会社「パナソニックプロジェクター&ディスプレイ(PPND)」はオリックスから8割の出資を受ける予定だったが、条件が折り合わず、2025年7月末に破談となった。
売却額まで公表した合意が白紙になるのは異例だ。PPNDの安立洋介CEO(最高経営責任者)は「社員に動揺があったことは否定できない。営業がしづらい時期もあった」と語る。
成熟市場での生き残り策
パナソニックHDは屋外イベント向け高輝度製品で世界シェア1位を持ち、業界内の存在感は大きい。だが、「プロジェクターは成熟市場で、AIのように右肩上がりに拡大していく状況ではない」(安立氏)のが実情だ。機材販売だけでは頭打ちが見込まれる中、今後はプロジェクションマッピングを含め、映像を活用したイベントの企画段階から提案力を高めていく考えだ。
PPNDは2026年5月、英国の新興企業「ハイブ・メディア・コントロール」を買収した。同社は複数プロジェクターを連動させて臨場感のある映像を投影するノウハウに強みを持つ。安立氏は「どのような映像体験を提供するか検討する機材納入前の段階から関わっていく」と話す。6月には主力の大型プロジェクターで2年ぶりとなる新製品も投入し、解像度の高さや耐久性といった技術面での差別化を図る。
アナリストの見方
岩井コスモ証券の有沢正一シニアアナリストは「プロジェクター事業は稼げていないわけではないが、パナソニックHDの中で本流の事業とは言えない。成長投資を続けていけるかが課題だ」と指摘する。



