欧州の大手自動車メーカーが、電気自動車(EV)の販売低迷を受けて戦略の大幅な転換を迫られている。フォルクスワーゲン(VW)は、ドイツ国内の工場閉鎖を検討しており、ステランティスは値下げ攻勢に出ている。背景には、中国勢の台頭と欧州内の需要減退がある。
VW、工場閉鎖の可能性
VWは、コスト削減のためにドイツ国内の工場を閉鎖する可能性を発表した。これはVWの創業以来初めてのことで、約87年の歴史の中で前例のない措置となる。同社は、EVへの移行に伴う需要の変化に対応するため、生産能力の見直しを迫られている。VWのブランドCEOであるトーマス・シェーファー氏は、「厳しい決断だが、将来の競争力を確保するために必要だ」と述べている。
ステランティス、値下げで対抗
一方、ステランティスは、欧州市場でEVの値下げを実施している。同社の主力モデル「プジョー e-208」や「オペル コルサ-e」は、最大で約20%の値引きが行われている。これは、中国のBYD(比亜迪)や上海汽車集団(SAIC)などの中国勢が低価格EVを投入し、市場シェアを拡大していることへの対抗策とみられる。ステランティスのCEOであるカルロス・タバレス氏は、「価格競争は避けられないが、品質と技術で差別化する」とコメントしている。
中国勢の攻勢
中国のEVメーカーは、欧州市場で急速に存在感を高めている。2023年には、中国製EVの欧州への輸出が前年比で約50%増加した。特にBYDは、ドイツやフランスなどの主要市場で販売網を拡大しており、2024年には欧州での販売台数を倍増させる計画だ。また、SAICのブランド「MG」も、欧州で人気を集めており、2023年の販売台数は10万台を超えた。
欧州の需要減退
欧州全体でのEV需要も減退している。2024年第1四半期のEV販売台数は、前年同期比で約5%減少した。主な要因として、補助金の縮小や充電インフラの不足、価格の高さが挙げられる。特にドイツでは、2023年末にEV購入補助金が打ち切られたことが需要に大きな打撃を与えた。ドイツ自動車工業会(VDA)のデータによると、2024年1月から3月のEV新車登録台数は、前年同期比で約15%減少している。
業界再編の可能性
こうした状況の中、欧州自動車業界では再編の動きが加速する可能性がある。アナリストの間では、VWやステランティスがさらなるコスト削減や提携を模索するとの見方が強い。また、欧州委員会は、中国製EVに対する追加関税の導入を検討しており、これが市場に与える影響も注目される。



