全国で相次ぐアリーナ建設、Bリーグ人気と国の成長戦略が後押し…収益化が課題に
全国で相次ぐアリーナ建設、Bリーグ人気と国の成長戦略が後押し

スポーツやコンサートの会場として、数千人から数万人の観客を収容する屋内施設「アリーナ」の新設や建て替えの動きが全国で相次いでいる。男子プロバスケットボールのBリーグ人気を追い風に、街のにぎわいを創出し、地元経済への波及効果に注目が集まる一方で、国が打ち出す「稼ぐアリーナ」の実現は容易ではない。各地で計画が進む背景や今後の展望を探った。

神戸の新アリーナが生む効果

8月4~5日、米プロバスケットボール協会(NBA)で活躍する八村塁選手が現役のコーチと神戸市を訪れ、中高生約100人を指導する。2年目の企画で関西初開催となる会場には、昨年4月に開業したジーライオンアリーナ神戸が選ばれた。

アリーナは、市が進める神戸港の再開発プロジェクトの中核施設だ。2025年シーズンはBリーグ2部(B2)だった「神戸ストークス」の本拠地で、一日1万62人の観客を動員し、B2史上最多を記録した。コンサートや大学の入学式のほか、夜景を見ながら走るリレーマラソン大会など約30の自主イベントも企画し、年間で約162万人が訪れた。

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市から50年間の契約で土地を賃借したNTT都市開発(東京)が建設。いずれもIT企業のスマートバリュー(大阪市)が出資する2社のうち、「One Bright KOBE」(神戸市)がアリーナを、ストークス(同)がチームをそれぞれ運営する構図だ。3社の社長を務める渋谷順氏がBプレミアの参入を目指し、アリーナ新設に動いた。

稼働率と収益の課題

Bプレミア入りは決まったが、年間のアリーナの稼働率は70%と目標の80%を下回った。「スポーツやエンタメ、コンベンション(会議)の全てを網羅できるノウハウがなかった」(渋谷氏)といい、事業は赤字だった。

黒字化を目指す26年度は、興行主との交渉も順調で、4月以降の稼働率は85%で推移する。来場者の周遊データを活用し、市や地元の商業施設などと協力して交流人口の拡大にも取り組む。渋谷氏は「50年先を見据えた民間主導の街づくりのモデルを構築したい」と意気込む。

国が後押しする背景

スポーツ庁によると、全国では今年1月時点で40件のアリーナ新設や建て替えの構想がある。契機になったのは16年の国の政策転換とBリーグの誕生だ。

この年、政府は「日本再興戦略」を打ち出し、スポーツビジネスを成長産業の一つに位置付けた。「スタジアム・アリーナ改革」を掲げ、両施設が街づくりや地域活性化の核になるよう、財政支援や専門家の紹介などに乗り出し、自治体や民間企業の整備を後押しした。

背景には、公共スポーツ施設の老朽化がある。同庁の調査で、25年には大規模改修の目安となる築30年以上の施設が全国で約7割を占めた。アリーナ事情に詳しい日本女子体育大の上林功教授は「建て替えを機に、教育的側面が強かった体育施設を、公的資金に依存する『コストセンター』から地元に還元できる収益を生み出す拠点に転換させるのが改革の狙いの一つだ」と説明する。

16年に開幕したBリーグの人気も追い風になった。昨シーズンの入場者数は548万人と開幕年の2.5倍に増えた。Bプレミアの開幕で、アリーナ建設の流れは加速している。

収益確保の課題

各地のアリーナ構想に影を落とすのが、急激な物価高だ。福井市内で28年秋の完成を目指す新アリーナの整備費は、最大160億円と当初の75億円から2倍超に膨らんだ。民設民営では資金が手当てできず、国と県と市は計60億円を負担する方針だが、議会では公金投入の是非が問われている。

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アリーナの持続的な収益の確保も課題になる。高い稼働率の維持が求められるが、Bリーグの主催試合は年間30試合程度で、残りの300日以上をコンサートや国際会議といった別の催事で埋めるのは簡単ではない。

公共サービスに詳しいコンサルティング大手アクセンチュアの福田隆之氏は「今後はより低い行政負担で利用者の満足度を高められるかが重要だ」と指摘。「専門人材を確保し、官民で連携できる体制を構築できるかが成功の鍵になる」と話す。

Bリーグの新体制

Bリーグは、企業チーム中心のナショナルリーグ(NBL)と、地域密着を目指すプロのbjリーグが統合して誕生。全国に55チームあり、試合のシーズンは毎年秋から翌春。今秋に始まるシーズンから成績に基づいて1~3部で昇格・降格する制度を廃止し、「Bプレミア」「Bワン」「Bネクスト」を創設。5000席以上でVIPルームを備えたアリーナを持つなどクラブの運営能力に応じて配属が決まる。

コンサート市場の拡大と関西の課題

アリーナ需要が高まる背景には、コンサート市場の拡大もある。ぴあ総研によると、2025年のライブ・エンターテインメントの市場規模は前年比12.6%増の8564億円と3年連続で過去最高を更新した。

関西では、有名アーティストによる大規模コンサートの開催は大阪城ホール(大阪市)などに限られる。音楽ライブの主催者などで作る「コンサートプロモーターズ協会(ACPC)」関西支部会は24年、「大型公演の『関西飛ばし』がさらに加速し、関西のエンタメが衰退する」として、1万人以上が入るアリーナの建設を訴える声明を出した。上田博之会長は「楽屋からステージまでの動線や音響など、使い勝手が良くなるように協力したい」と話す。

ACPCの調査によると、コロナ禍前の19年と24年の動員数の増加率は、近畿が4.4%にとどまり、関東(36.8%)や東海(21.1%)に大きく水をあけられている。