出版不況の中、独走する46万部雑誌
日本ABC協会が発表した2025年下半期の雑誌販売部数で、月刊誌『ハルメク』が月平均45万9000部を記録した。コミック誌を除く全雑誌の首位を8半期連続で守り続けている。書店の棚やコンビニには並ばない、50代からの女性誌だ。
前身誌の版元は2009年に民事再生を申請。2017年には部数が創刊以来の最低水準である14万5000部まで落ち込んだ。同年、山岡朝子が編集長に就任。以来9年で雑誌は復活し、グループは通販やイベント、ウェブ事業に拡大。2023年3月には東証グロース市場に上場した。
どん底からの復活劇:15万部割れからV字回復
山岡編集長は、就任後すぐに大胆な改革に着手。誌面のリニューアルだけでなく、読者との対話を重視した。特に新聞広告を通じて「読者層と対話」する手法が功を奏した。ターゲットである50代以上の女性が実際に読む新聞に広告を出稿し、反応を直接収集。読者の声を誌面に反映させた。
さらに、原宿の美容室とのコラボレーション企画「誰もが驚いた変身企画」を実施。読者モデルを起用したビフォーアフター企画が話題を呼び、口コミで購読者が増加した。
新聞広告戦略と読者との対話
山岡編集長は「新聞広告は高コストだが、ターゲットに確実に届く」と語る。一般的な雑誌広告ではなく、新聞の特定面に掲載することで、中高年女性の目に留まりやすい工夫をした。広告にはアンケートのQRコードを掲載し、読者の年齢や趣味、悩みを収集。そのデータを基に記事を企画した。
この戦略により、2018年には部数が20万部を回復。その後も右肩上がりで伸び続け、2025年には45万9000部に達した。
出版不況に逆行する理由
『ハルメク』の成功は、既存の雑誌流通に頼らない販売戦略にもある。書店やコンビニではなく、定期購読と新聞広告からの直接販売が主体。これにより返本率を低く抑え、安定した収益を確保している。
また、雑誌を核に通販やイベント、Webメディアへと展開。読者のライフスタイル全体をカバーする事業モデルが、上場を可能にした。山岡編集長は「雑誌はあくまで入り口。読者との関係を深めるプラットフォームだ」と強調する。
今後の展望と課題
出版業界全体では紙の雑誌の衰退が続くが、『ハルメク』はデジタル版も強化。Webサイトの会員数は50万人を超え、動画配信やオンラインセミナーも好調だ。しかし、紙の部数維持とデジタルシフトのバランスが今後の課題となる。
山岡編集長は「読者が求めているのは情報ではなく、共感とつながり。これからも読者一人ひとりと向き合う姿勢を変えない」と語り、さらなる成長を見据えている。



