東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授・基幹分野長の若林秀隆氏は、著書『幸福寿命』(日刊現代)の中で、サルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)の予防に効果的な運動として、無理のない「プチストレッチ」や「プチ散歩」を推奨している。特に、痛みの原因を理解した上で短時間でも継続することが重要だと強調する。
「プラス10分のプチ散歩」がもたらす効果
若林氏によれば、サルコペニア・フレイルの予防に最も効果的な運動は筋力トレーニングだが、プチ散歩も有用である。1日の歩数が少なくてなかなか増やせない人には、今よりプラス1000歩(もしくはプラス10分)の散歩を勧めている。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人で1日8000歩以上、高齢者で1日6000歩以上の身体活動を推奨しているが、若林氏は「6000~8000歩まで歩けなくても、少しでも歩数が多いほうが身体面や心理面の健康によい」と指摘する。
具体的には、スマートフォンの歩数計アプリを活用し、1日の歩数の目標をプラス1000歩に設定することを提案。可能であれば、3分間速歩きと3分間ゆっくり歩きを繰り返す「インターバル速歩」が、マイペースで歩き続けるより効果的だという。
実例:60代女性Bさんの劇的な変化
若林氏が出会った60代女性のBさんは、身長155cm、体重75kg、BMI31.2という肥満体型で、長年腰と膝の痛みに悩まされていた。痛みのために「もう外を歩けない」とあきらめ、一日中家の中で過ごし、社会的に孤立し、抑うつ状態にもあった。
若林氏はBさんに対し、天気の良い日に夫と一緒に家の外に出て、1日10分(約1000歩)だけ歩くことを勧めた。同時に、糖分の多い清涼飲料水を一切やめ、お茶や麦茶などエネルギーを含まない飲み物に切り替えるよう指導した。
6カ月後の成果:体重減少と痛みの軽減
その結果、6カ月後にはBさんは1日30分(約3000歩)を無理なく歩けるようになり、体重は75kgから70kgに減少。近所のスーパーまで一人で買い物に行けるまでに回復した。運動と減量の効果で抑うつ状態も改善し、体重減少により腰と膝の痛みが軽減され、さらに歩けるようになる好循環が生まれた。
若林氏自身の実践例と自然の効用
若林氏自身も、通勤で片道約1000歩を歩き、仕事中は2フロアまでなら階段を上り、下りは11階からでも階段を使うことで、1日約6000歩を確保。さらに合計で1日8000歩程度になるよう心がけている。休日には新宿御苑や北の丸公園、皇居東御苑、神宮外苑などを散歩し、自然に触れることでストレスホルモンを減らし、リラックス効果を高めているという。
プチストレッチのすすめ
若林氏は、肩こりや腰痛の予防には「プチストレッチ」も効果的だと述べている。短時間でも全身のストレッチを続けることで、痛みの予防が期待できるとし、朝のNHKテレビ体操を毎日欠かさないと明かしている。



