売上8割減で瀕死の町工場が「卵とき」で2億5000万円…社員半減に耐えて作った妻のためのアイデア調理器具
売上8割減の町工場が「卵とき」で2億5000万円の奇跡

東京都荒川区の町工場「トネ製作所」が、売上の8割を失う経営危機から、妻のために開発した卵とき専用調理器具「ときここち」で見事に復活を遂げた。2008年、主要取引先が製造拠点を中国に移したことで、売上は8割減少。従業員30人を15人に半減せざるを得ず、社長の利根とね通とおるさんは「社員をリストラしたことが本当に申し訳なく、苦しい思いをしました」と当時を振り返る。

妻の悩みから生まれた試行錯誤

利根さんの妻・涼子さんは、卵の白身が大の苦手で、菜箸でしっかり混ぜても黄身と白身が一体にならず、手が疲れてしまうことに長年悩まされていた。2017年、涼子さんから「卵を均一にうまく混ぜられる調理器具を作ってほしい」と頼まれた利根さんは、すぐに開発に着手した。

試作品1号はステンレスの平べったい棒で、機能的には卵をとけたが無骨なデザインだった。試作品2号では持ち手に猫の装飾を施したが、涼子さんから「持つと手が痛い」と却下。試作品3号ではフチを丸く削り、アイスクリームスプーン状の先端に3本の線を入れてかき混ぜ効率を向上させたが、「短すぎて卵液が指につく」という指摘があった。

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試行錯誤の末に完成した「ときここち」

試作品4号では全体を長くし立体感を持たせたが、涼子さんは「持ち手の穴が変」と指摘。デザインや厚みの微調整を重ね、最終的に完成した「ときここち」は、卵とくことに特化したシンプルで使いやすい形状となった。価格は4000円を超えるが、その機能性が口コミで広がり大ヒットに至った。

量産段階では破損品が大量に発生するトラブルもあったが、利根さんは家族と地域の協力を得て乗り越えた。涼子さんは「夫は愚痴を言わない人なので、とても心配でした。経営を助けられるようにと、自分もビジネスの勉強を始めました」と語る。

6年半で2億5000万円の売上

「ときここち」は発売から6年半で累計売上2億5000万円を達成。利根さんは「お客様からの手紙が何よりの宝物。家族と地域で作り上げたブランドです」と話す。町工場の技術と家族の愛情が結実したこの製品は、苦境に立つ中小企業に希望を与える成功事例となっている。

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