金利上昇で得する人、沈む人:銀行員の営業術と賢い資産運用のポイント
金利上昇で得する人、沈む人:銀行員営業術と資産運用

金利上昇が進む中、金融機関での資産運用を巡り、得をする人と損をする人の差が鮮明になっている。元銀行員でファイナンシャル・プランナーの高橋忠寛氏(リンクマネーコンサルティング代表取締役)は、銀行員の営業手法に潜む構造的な問題を指摘する。家電を買う際には価格や機能を徹底比較するのに、投資商品となると銀行員の薦めに従ってしまう顧客が多いという。高橋氏は「銀行員は『アドバイスのプロ』ではなく『セールスのプロ』。手数料が報酬の源泉であることを理解すべきだ」と警鐘を鳴らす。

銀行員が顧客を見分ける「口グセ」とは

高橋氏によれば、銀行員は顧客との短い会話で、その人が「狙われる人」か「使い倒す人」かを瞬時に見分けるという。その決定的なポイントは、顧客が発するたった一つの口グセだ。例えば「今が買い時ですか?」と尋ねる顧客は、情報に弱く、銀行員の提案に乗りやすい傾向がある。一方で「手数料はいくらですか?」と具体的に質問する顧客は、警戒心が強く、銀行員も無理な営業を控えるという。高橋氏は「『アドバイス』ではなく『セールス』のプロである銀行員は、顧客の反応で営業戦略を変える」と解説する。

「今が買い時ですよ」という言葉の裏側

銀行員が頻繁に使う「今が買い時ですよ」というフレーズ。高橋氏は、この言葉には注意が必要だと指摘する。銀行員は商品のメリットを研修で徹底的に叩き込まれているが、コストの低いインデックスファンドやETF(上場投資信託)との比較を学ぶ機会は社内にほとんどない。そのため、銀行員自身が「これがいいものだ」と本気で信じて薦めているケースも少なくない。しかし、その裏には販売手数料や信託報酬といったコストが隠れており、長期的な資産形成に大きな差を生む。

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手数料の差が30年後の資産額に与える影響

高橋氏は、手数料の違いが資産形成に与える影響を具体的に示す。例えば、年率1%の運用利回りで30年間運用した場合、手数料が年0.5%高いだけで、最終的な資産額は約15%も減少する。これは、複利効果による差が長期間で拡大するためだ。高橋氏は「低コストのインデックスファンドを選ぶだけで、同じ運用成績でも受け取る金額が大きく変わる」と強調する。銀行が販売する投資信託の多くは、信託報酬が年1%を超えるものが多く、インデックスファンドの0.1%台と比べてコスト面で不利だ。

「10年後にこのくらいの資産にしたい」という目標設定の落とし穴

銀行員がよく使うもう一つの手法は、「10年後にこのくらいの資産にしたい」と顧客に目標を設定させること。高橋氏は、これが銀行員の営業トークの典型的なパターンだと指摘する。顧客が目標を口にすると、銀行員はそれに合わせた商品を提案しやすくなる。しかし、その目標達成に必要なリスクやコストについて十分な説明がないまま契約に至るケースが多い。高橋氏は「目標設定自体は悪くないが、それを達成する手段として銀行の商品が最適とは限らない。自分で情報を集め、比較検討することが重要だ」とアドバイスする。

銀行員の「構造的な問題」と賢い付き合い方

高橋氏は、銀行員が悪意を持って顧客を騙しているわけではないと断る。銀行員は役に立ちたい、いいものを紹介したいという気持ちは本物だ。しかし、銀行の報酬体系は商品販売の手数料に依存しており、顧客の長期的な利益と必ずしも一致しない。この構造的な問題を理解した上で、銀行員と付き合うことが重要だ。具体的には、以下のポイントを押さえるべきだと高橋氏は言う。

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  • 手数料を確認する:購入時手数料や信託報酬、解約手数料など、全てのコストを確認する。
  • 複数の選択肢を比較する:銀行の商品だけでなく、ネット証券や低コストインデックスファンドも検討する。
  • 自分の投資目的を明確にする:短期的な利益ではなく、長期的な資産形成を目指す。
  • 専門家のセカンドオピニオンを求める:独立系FPなど、中立な立場のアドバイザーに相談する。

高橋氏は「銀行員はセールスのプロであって、アドバイスのプロではない。その違いを理解し、自分で判断する力を持つことが、金利上昇時代に資産を守る鍵だ」と結論づけている。