野村ホールディングスは昨年、創業100周年を迎えた。伝統を守りつつ時代に合わせた革新に取り組んできた同社は、次の100年に向けて何を見据えるのか。奥田健太郎社長(62)に聞いた。
外国人社員が半数、多様な意見こそ力
グループ約2万9000人の社員の半数は外国人で、国籍は約90か国に及ぶ。年間採用者数の約7割は中途入社と、多様化が進んでいる。
2008年に経営破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズから欧州・アジア事業を買収したことが、ダイバーシティー(多様性)の必要性を意識するきっかけとなった。野村に加わった8000人強の人たちは、考え方やビジネスのやり方が全く異なっていた。新しい同僚を受け入れ、強い組織をつくっていく必要に迫られたという。
評価体系をわかりやすくし、能力に対してしっかり賃金を支払う制度を導入した。年功序列では良い人は来てくれない。現在は国籍だけでなく、家庭環境や、どんな教育を受けてきたのかといったことも含め、多様な人材を受け入れる人事制度を作っている。
コミュニケーションをしっかり取ることも必要だ。香港でアジアトップを務めていたリーマン出身の米国人が「日本から派遣してきた社員を全員帰国させてほしい」と告げてきたことがあった。話を聞いてみると、「日本人はロイヤルティー(忠誠心)が低い」などと言う。会社に尽くす気持ちは彼らの方があるんじゃないかと疑問をぶつけると、「会社じゃなくて、自分や一緒にやっているチームに対してのロイヤルティーを求めているんだ」と言い返され、日本人駐在員から報告がないことなどの不満を述べられた。
「ロイヤルティー」という言葉一つでも、全然違うことを考えているのかと驚かされ、直接会って話すことの大切さを痛感した。結局、日本人ほぼ全員を帰国させ、代わりの人員をトップがビデオ面談した上で派遣することで納得させた。
取締役会でも多様化、株主還元方針に変化
取締役会のメンバーも、多様化が進んでいる。現在は11人中3人が外国人で、貴重な助言をもらっている。
株主には利益の5割を還元することを約束しているが、ある時「成長につながるのであれば、還元を減らしてでも投資すべきだ」と、海外のメンバーから言われた。「円安が進む前に早めのドル調達をした方がいい」というアドバイスも1~2年前から受けていた。
様々なキャリア、視点からの意見はすごく役に立っている。「ダイバーシティーは力になる」と実感している。
投資銀行部門の経験、スクウェア・エニックス合併
投資銀行部門での経験が長い。03年のゲーム大手スクウェアとエニックスの合併にも携わった。
スクウェアは「ファイナルファンタジー」、エニックスは「ドラゴンクエスト」が主力ゲームで、両社は発売のタイミングをずらし、競合を避けていた。主力商品の有無で、年間売上高が大きく変動していた。
2社が一緒になれば、主力ゲームを計画的に販売することで業績の変動を抑えられるし、膨らんでいた開発コストをコントロールすることもできる。そう考え、合併を提案した。筆頭株主の創業者が反対するなど、簡単な案件ではなかったが、合併後、業績が思った通りに伸びたのがうれしかった。
ちょうどこの頃は、投資銀行部門の仕事のやり方を変えたタイミングだった。競合会社を別々の部で担当していたのを、同じ業界の企業は一つの部で担当するようにした。業界の知識を身につけなければ、顧客企業のお手伝いができないという問題意識があった。



